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奸計〜罠に堕ちた女達〜
第18章 催眠〜母娘〜
狩野はさらに二人の手相を見たいと、真希と陽菜に手を出させ、手のひらの線をなぞるように指を動かす。知らない異性から手のひらをなぞらえる行為は嫌悪感を伴うはずだが、雰囲気に呑まれたかのように二人とも心地良ささえ感じていた。

「…次に陽菜さんの運勢ですが…。」

狩野の説明が続くが、陽菜の瞳はトロンとしたものに変わり、聞いているのかいないのかわからない様子である。しかし、隣の真希はそれに気づかずぼんやりと説明を聞いている。そんな様子を占い師の狩野は気にすることなく、説明を続ける。説明する声は熱を帯び、忙しなく両手を動かし、身振り手振りを使って運勢を伝えていく。そうこうする内に20 分を過ぎて予定の時間が終わりに近づくころ、パンッと狩野が手を叩く。
二人がハッと目を狩野に向ける。

「どうやら娘さんのほうはとても催眠にかかりやすい体質のようですね…。」

狩野が呟くが、その言葉が二人ともうまく頭に入ってこない。ぼんやりと霞がかったように思考が働かない。そんな二人に狩野が声をかける。

「陽菜さん、貴女の隣には誰がいますか?」

「…ママ…。」

「そう、貴女の母親の真希さんがいます。お母さんは好きですよね?」

「は…い。」

「貴女のすぐ隣に好きな人がいます。では、その好きな人にはどうやって愛情を伝えますか?」

「…好きだと言います…。」

「それだけですか?大好きな母親に好きだと伝えるだけですか?思い出してください。小さい頃、大好きな母親にどうやって甘えていましたか?」

「どうやって…?甘える…?」

「貴女の好きなように甘えていいのですよ?さあ、ここには誰もいません。遠慮なく甘えてください。」

「あぁ…。ママぁ…。」

陽菜は隣にいる真希に抱きつく。真希の首筋に頭を擦り付け甘え始める。真希は反射的に陽菜を抱き締めてやるが、この状況に頭の中でどこかおかしさを感じる。しかし、その違和感を深く考える前に狩野の言葉が思考を遮る。

「さあ、真希さんも…。ここには誰もいません。気兼ねなく陽菜さんを甘やかしてください。」

「…は…い…?」

何かがおかしいと脳の奥でチカチカと危険信号が出ているにもかかわらず、真希は返事をしてしまう。そこに狩野が筮竹を激しく鳴らす。

「陽菜さん、貴女はもっと小さい時は母親の何を求めていましたか?母親のどこが一番安心出来る場所でしたか?」
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