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奸計〜罠に堕ちた女達〜
第25章 高飛車な人妻
適当に客をあしらいながら、狩野は平静さを取り戻していく。そして、3日後。その日が訪れる。

その日、奈巳は朝からジムを訪れる。奈巳はその日は特に予定がなく、家事を終わらせた夕方に来たかったが、トレーナーの高城の空きが午前中しかなかったので、仕方なかった。

「今日は特に予定がなくて…。ゴロゴロしちゃいそうになる分、朝から頑張らないと!」

そんな風に受付で話す奈巳の声を受付奥の部屋で耳にした狩野は、ますます好都合だと暗い笑みを浮かべる。狩野は午後から半休を取っている。それが無駄にならずに済みそうである。

そして、トレーナーの高城が離れた隙を狙って奈巳に話しかける。

「鈴木様…。ちょっとよろしいですか…?」

「何よ…?」

狩野が話しかけるだけで不機嫌な雰囲気を醸し出す奈巳。その理由がわからない狩野は内心イラッとするものの、表情には出さず、素早く携帯の画面を奈巳の眼前に突き出す。

「これについて少しお話ししたくて…。」

「なっ!?こ、これはっ!?ど、どうしてっ…?」

「お静かに…。注目を集めますよ…?どこかで二人きりで話しませんか…?」

狩野は奈巳が男性と腕を組みラブホテルに入る写真が表示された携帯をプラプラさせながら、奈巳に囁やく。

「二人で…話しを…?」

写真に対する衝撃と狩野の言葉への戸惑いに顔を真っ青にしている奈巳。しかし、高城が戻って来る姿が見えたので、狩野はそれ以上話すことなく、奈巳から離れる。

狩野の背中に奈巳の視線が痛いほど突き刺しのを感じる。しかし、狩野は焦らず業務に戻る。
どうせ、奈巳から何らかのアクションが来るであろうと予測して。

そのまま業務を続けていると、トレーニングを終えたらしい奈巳とすれ違う。その時、奈巳が素早く周りを確認すると、狩野に紙を握らせてくる。狩野は何も言わず、それをポケットに押し込みその場を離れる。奈巳も何も言わない。

狩野は事務所に戻り、周りに誰もいないことを確認してから紙を開く。そこには慌てたような殴り書きで携帯の番号と【電話して】とだけ短く書かれている。それを見て、にやりと笑う狩野。

狩野はすぐに電話することなく、予定通り昼まで業務をこなし、退勤してから奈巳に連絡をする。

「はいっ。もしもしっ?」

慌てたような奈巳の声が聞こえる。

「あぁ、狩野です。鈴木様、今、お電話よろしいですか?」
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