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奸計〜罠に堕ちた女達〜
第33章 残業
「ま、眞島君っ!?どうしたんだい?大丈夫か!?」

狩野がソファに倒れ込む沙耶に気づいて、慌てて近寄って来る。

「だ…大丈夫だと…。ちょっと…立ちくらみが…。」

沙耶がクラクラしながら答える。

「それはいけないな…。残業が堪えたかな…?救急車呼ぶほどかい?」

「い…いえ…。そこまでは…。少し休めば…。」

沙耶はそう答えながらも、自分の身体が汗ばみ始める感覚を覚える。気がつけば動悸も激しくなっている。

薄っすら汗をかき始めた沙耶を狩野は心配そうに見つめる。

「ふむ…。少し息が荒いな…。私が車を持ってれば病院まで送るんだが…。」

狩野も電車通勤のため、送ることが出来ない。

「眞島君。少し休んで良くならなさそうなら、タクシーで病院へ連れて行くよ?いいね?」

「はい…。すみません…。」

頭がクラクラしつつ、何だか身体がフワフワしてきた中、沙耶はまともに狩野を見ることすら出来ず、だらりとソファに横になったままだ。

スーツスカートから伸びた沙耶の脚。黒のストッキングに包まれた形の良い脚が太もも辺りまで見えてしまっている。
好色な視線を狩野がその脚に這わせたところを沙耶は見ていなかったのだ。

すっと、沙耶の目の前に蓋が開けられたペットボトルの水が差し出される。

「水だ。飲めるかい?汗をかいているようだから、飲んだほうが良い。」

そう勧められた沙耶は特に疑問に思わず、水を口にした。その時、狩野は沙耶に見えない角度でニヤリと笑っていた。

「タオルを濡らして来よう。眞島君はゆっくりしてたまえ。水はここに置いておくよ…。」

コトリとガラステーブルにペットボトルを置いて、狩野は給湯室へと消える。

『はぁっ…はぁっ…。本当にどうしたんだろぉ…?身体が熱く…み…水…。』

頭のクラクラよりも身体が火照るように熱くなってきた気がする。沙耶はもらった水をコクコクと喉を鳴らして飲む。

「んっ…。はぁっ…。なんか…甘い…?」

普通の水のはずだが、味に違和感を感じる。しかし、その思考も長く続かない。身体の奥がジンジンと疼くような感覚。

「あぁ…。暑い…。何でこんなに汗が…。病院行くべきかしら…。」

沙耶はシャツのボタンを一つ外し、パタパタと風を送り込む。しかし、そんなことで汗は止まらず、身体の疼きは酷くなる一方だ。
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