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奸計〜罠に堕ちた女達〜
第39章 内見
『どうすれば…。どうにかしないと…。あっ…!』

必死に考える美月に一つの考えが浮かぶ。その考えに縋り付くように、美月は声を絞り出す。

「わ…私…仕事中なのよ…。このあと…もう1人…来る予定だから…。今すぐ…止めないと…。」

美月はもう1人社員がここに来ると口にする。これで狩野が焦ればと…。

「はいはい。見え透いた嘘はやめようね〜?他の社員は別の仕事か、休みでしょ?だから、休日返上で君が来たんだし。」

「なっ…!?なんでそれを…?」

逆に驚かされ、簡単にボロを出す美月。そんな美月に狩野が追い打ちをかける。

「休みだったけど、特に予定がなかったみたいだし…。君がすぐに帰らなくても、誰も不審には思わない。」

「そ…そんなことまで…!?」

「うん。その様子だと、予定変更もなしっと…。嘘をつくなら、もっと上手につかないと…。」

美月は口をパクパクさせるが、何も言えず黙り込む。狩野の方が1枚も2枚も上だった。

「だめだよ〜?人がいるところで簡単に自分の予定を話しちゃ…?」

美月は狩野の言葉に昨日の電話での話を聞かれていたことを悟る。

『ぜ…全部バレてる…。あぁ…私…。どうしたら…。』

混乱する美月と対照的に狩野はあまりに冷静であった。

「美月の携帯は…。あ〜、とことん不用心だね〜。faceIDにしてるなんて…。」

狩野はそう言って、携帯を美月に向け、勝手にロックを解除する。

「勝手に…触らないで…。何してるのよ…?やめて…!」

「わかりやすく君の希望を全部潰しておこうと思ってね…。これか…?いや…ん…と…。あぁ…あった、あった。ふむ…。シンプルな連絡ばっかりだから、真似するのが楽だね…。」

狩野は勝手に美月の携帯を操作し、何かを探して見つけたようだ。

「い…いっ…たい…何をして…!?返しなさいよっ…!」私の希望を…潰すって…!?何を言って…。」

「これこれ…。あの不動産屋の店長さんとの業務のやり取り…。」

そう言って狩野が画面を見せてくる。美月は目の前が真っ暗になりかける。

店長の叔父とのラインのページが開かれ、そこにはすでに、「お客さんとの内見終わりました。詳しくは出社した時に話しますが、明日、契約に来てくれると思います。お疲れ様でした。」と打ち込んである。

美月ではなく別人が打ったなど、この文面から推測するのは不可能であろう。
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