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奸計〜罠に堕ちた女達〜
第41章 枕営業
中学生から芸能活動する里依紗はきちんと契約が何たるかも理解している。頭も良く、それなりに業界で揉まれて来た経験もある。だからこそ遠慮なく、自身の考えを伝える。

「私は…、私の全てを差し出すつもりです…。それなりの犠牲を払うのに、できませんでしたで終わらせられたら困りますから。」

狩野を睨みつけるような鋭い視線を向けてくる。狩野はその視線に苦笑いしながら、もう1枚の書類を差し出す。

「わかった。君の覚悟は伝わった。こちらが本当の書類だ。」

「私を試したんですか…?」

訝しむ様子で、書類を受け取り、再び目を通す里依紗。先ほどとさほど変わらない書類。しかし、最後のほうに追加された文章があった。

・以上のことが履行できなかった場合、狩野は里依紗に補償として、5000万を支払い、さらに慰謝料として、10年間毎月20万を支払うこと。狩野が不慮の事故等で亡くなった場合も、遺言として残し、支払いを確約すること。

追加された文章に目を見張る里依紗。

「これは…。いいんですか…?こんな契約をして…?」

5000万に、10年間、毎月20万。個人で支払うにはかなりの額だ。里依紗が疑うのも無理はない。

「もちろんだ…。私も数多くのトップスターを送り出して来た矜持がある。これくらいの覚悟はあるさ…。だからこそ、君が偽の書類でどう反応するかも見させてもらった。何の補償も書いてない契約書で納得するような頭がお花畑のヤツなど、いらない。私が契約するのはちゃんと売れる見込みがある女性だけだ。」

「わ…私には…売れる見込みがありますか…?」

数多くの女性を世に送り出してきた社長に言われ、気色ばむ里依紗。

「ああ…。君の望み通りの歌い手にしてやろう。」

「あ…ありがとうございます…!」

中学生の時から活動し、人生を賭けて努力してきたつもりであった。しかし、現状は鳴かず飛ばずの地下アイドル。里依紗の心は折れかけていた。しかし、狩野に力強く売れると言われ、里依紗は涙を流し始める。

黙ってその様子を眺める狩野。里依紗は1分ほどで涙を止める。

「すみません…。自信を失いかけていたので…。そう言っていただけて…嬉しくて…。」

「かまわんさ…。売れる第一歩は君が自信を持つことだ。」

狩野は寛容に言う。そんな狩野に里依紗は少し疑問に思ったことを聞いてみることにする。
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