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第20章 転勤

新幹線の車内でも
隣同士で並んで座った。

朝からずっと隣同士というのは
何だか肩が凝ってしまう。

「やけに大きな荷物ですね」

「女はね荷物が多くなるのよ
泊りがけですもの、着替えが必要でしょ？」

「えっ？宿泊するんですか？
参ったなあ…てっきり日帰りだと…」

不動産屋に立ち寄って
安価で会社に近い物件を契約するだけだから
そんなに時間をかけなくてもすみそうなものなのに


「適当な物件で我慢しようとでも考えてたの？
ダメよ、衣食住の確保はしっかり吟味しないとね」

「はあ…そういうものですかね…」

まさか、異動させられて
このまま本社に戻ってこれない？

これって、業績を立て直すという名目の
単なる左遷じゃないのか？


「言っておくけど、左遷じゃありませんからね」

「えっ？」

驚いた。この人は心が読めるというのか？

「私は支社とはいえ、
副社長として任をいただいたの
あなただって
黙っていたけど営業部長として行くのよ」

「えっ？俺が部長に？」

よしっ！俄然やる気が出てきた。

役職を利用して
部内の可愛い女を手懐けると言うのも悪くない。

「あなた、男として
脂の乗りきっている世代だけど、
男女関係でもめないようにしてね」

まただ！

この女、ホントに人の心が
読めるんじゃないかと思った。