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第23章 放し飼い

咲希という上等な女を手放したのは痛いが
俺にはまだ、
中学時代の腐れ縁で飼うことになった
加菜恵がいる。


もう一度、総務部に戻り
デスクに座って
業務をこなしている加菜恵を見つけた。

「加菜恵」

デスクに近寄って声を掛けると
驚いたように体をビクッとさせた。

「大阪に転勤になったんじゃ…」

「さすが総務部。
情報が早いな。
だが、安心しろ、異動は来週からだ」

「そ、そうなんですね…」


おかしい？
久しぶりに会えたというのに
なんだ？この挙動不審は…

加菜恵との距離を詰めようと
一歩足を踏み出すよりも先に

「うちの伊藤くんに何かご用でしょうか？」

そう言って総務部長が
武郎の前に立ちはだかった。

「いえ、ちょっとした野暮用で…」

「それならば休憩時にお願いしますよ
今は勤務中なんでね」

有無を言わせぬ圧力を感じた。

「ちょっと伝言するだけなんですが…」

「仕事のこと以外なら
どうぞ、お引き払い下さい」


まったく！融通の効かないオヤジだ。

「わかりましたよ
加菜恵、昼休みになったら屋上に来てくれるか？」

加菜恵の返事も待たずに
それだけを言い残すと
総務部長に部屋を追い出された。


『今日の加菜恵…
なんだかよそよそしかったな』

しばらく放置したのがまずかったか…

まあいい、
今夜はたっぷりと可愛がってやることにするか。