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調教物語~ある男の性癖~
第30章 佐智子との永遠の別れ

涙がとめどもなく流れた。

もういいですよと
刑事が武郎を取調室から出してくれた。

「仏さん…あ、いや、
被害者の佐智子さんなんですが…
お母さんが認知症で身元確認をするにも
娘かどうかわからんと言うんですわ
もう一人、スナックのママさんに
確認をお願いしようとしたら
失神して病院に担ぎ込まれた…」

そこで…と言葉を繋ぎながら
「椎名さん、
あんた佐智子さんと面識があるんなら
ひとつ、身元確認をしてもらえませんか?」

ご遺体が痛まんうちに
司法解剖に回したいんですわと
半ば強制的に武郎を遺体と対面させた。

霊安室に
白いシーツに包まれて、
遺体は静かに横たわっていた。

「どうぞ、確認をお願いします」

吉村刑事に促されて
ゆっくりと顔にかかっている白い布を引き上げた。

現れたのは紛れもなく佐智子だった。

美しく白い顔は
窒息のために黒く変色し、
酸素を求めて開いた口からは
どす黒い舌が伸びていた。

生前の佐智子とはかけ離れていたけれど
それは佐智子だった。

「さ、佐智子ぉぉぉ~!」

思わず遺体にすがり付こうとしたが
吉村刑事がそれを阻止した。

「まだ司法解剖前ですので…」
暗に触れてはいけないと諭された。

吉村刑事には全てを話した。

佐智子と肉体関係にあったこと…
殺害される午前中に性交したこと…
立花が佐智子に
告白しようとしていたのを知っていたこと…
佐智子との関係を立花に教えなかったこと…

俺と出会わなければ…
俺と再会しなければ…

佐智子はまだまだ人生を謳歌できたはずなのに…



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