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私んちは淫乱家族ー続編<夏の終わりに>
第12章 旦那さまと奥さま

意外にも女性は、痴漢を許してやってくれと懇願する。
女性が許すと言うのなら、旦那さまが意固地になる理由はない。それよりもむしろ、痴漢をされながら大学生の将来を気遣って、見逃してやろうという女性の優しさを愛しいと思えた。
「はあ、お嬢さんが許すと言うのならば、見逃してやりましょうかねえ。私もこれから仕事だし」
女性は可愛く微笑んで、バッグから名刺を取り出したのです。
「わたし、お礼をしたいので、月曜日の夕方、もしご都合がよろしければ、ここへ来てくださいな」
「あの、都合はいいんだけど、お礼なんて別に……」
「いいえ、必ず来て下さいね。どうしてもお礼をしたいから、お待ちしていますわ」
女性は一礼をして立ち去った。去り際に、痴漢の大学生を見つめた瞳が、なぜか潤んでいたような気がしたそうです。
旦那さまは月曜日を待ちわびた。
彼女がどんなお礼をしてくれるのか、分からないけど楽しみだ。
奥さまを病気で亡くして大学生の春樹くんを養っているが、やもめ暮らしの熟年の身であれば、若い女性からの誘いは心がはずむ。

