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Start Over Again
第10章 恋人というのは

「山之内。恋人できたって聞いた、おめでとう」
「あっ、ありがとうございます」
「どんな人? か聞いていいのかな。これってセクハラ?」
「いえ、大丈夫ですよ。ええと…彼は年下ですが、頼りになって…かわいい人です」
「そうか、幸せそうで何より」
須藤さんが微笑む。だけどすぐにハッとしたように心配そうに橋本くんを見る。
あ…そうか。須藤さん、なぜかわからないけど、橋本くんが私のことを好きだと思ってるんだよなぁ。
これは誤解を解くべき…? と迷っていると、
「須藤くんは恋人は?」と背後から幸田さんの声。
おかえりなさーい、と私が言うのとほぼ同時に「恋人はいませんが、好きな人はいます」とあっさり言う須藤さん。
その言葉に動揺して枝豆を勢いよく飛ばす橋本くんと、「へえ~~」とにやにやする幸田さん。
「どんな子?」
「…こんな俺にも物怖じせずに接してくれて、誰に対しても思いやりのある…」
須藤さんの言葉の途中で店員がやってきてビールとたこわさと山芋鉄板焼きをテーブルに置いていった。
「ふぅん。その言い方だと、身近にいる子なのね」
「…そうですね。今も隣にいるので」
須藤さんの言葉に幸田さんはふふっと笑い、私は内心で ”ええーー!!” と叫び、橋本くんはピタリと動きを止めた。
そんな橋本くんを見て須藤さんは微笑みながら届いた山芋鉄板焼きを橋本くんの前に移動させる。
「みんなにやさしくて、山芋鉄板焼きが好きな橋本…おまえのことが好きだ」
「……これ、現実? …夢?」
戸惑った表情でつぶやく橋本くんに苦笑しながら頭を下げる須藤さん。
「急にこんなこと言って…困らせてすまない。男から好きなんて言われても…」
「こ…困ってませんっ!」
橋本くんの言葉に顔を上げる須藤さん。
「困らない…のか? でも俺が先輩だから気を遣って…」
「いえ…その何と言うか…むしろと言いますか…」
ごにょごにょとはっきりしない橋本くんを見て幸田さんがブハッと吹き出して
「だーかーらぁー、あんたたち両思いってこと! 橋本くんも須藤くんのことが好きなの! わかった? わかったら返事ぃ!!」とまくし立てるように言って、は、はい!! と二人は返事していた。

