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Start Over Again
第10章 恋人というのは

帰宅してからさらに気持ち悪くなってトイレに駆け込んだ。
嘔吐なんてほぼ経験ない私は、泣きながら便器と向き合っていて、そんな私の背中を朔ちゃんはやさしくさすってくれていた。
落ちついてからは水分補給をして入浴。
心配だからと朔ちゃんが全身洗ってくれて髪まで乾かしてくれるという至れり尽くせりコースを満喫したのち、
朔ちゃんの添い寝でフィニッシュ。
「気持ち悪いの、なくなった?」
「うん…」
うなずく私を見ながらもまだ背中をさすってくれる朔ちゃん。
ごめんね、と言いそうになるのをグッとのみこんで、ありがとう…と言うと、嬉しそうに微笑んでくれる。
「けいちゃん、明日は仕事休もう」
「…んー…」
体は休みたいと言ってるけど、頭はだめだと言ってる。
なぜなら、繁忙期に片足を突っ込んでいる時期だから。
迷いながら曖昧な声をもらすと、予想していたのか朔ちゃんは微笑んだまま私のおでこをさする。
「さっき須藤さんから連絡きて、体調不良って上の人に伝えといてくれるって」
「んー……え? なんで…」
この “なんで“ は、なぜ朔ちゃんが須藤さんの連絡先を知ってるの? という意味で、私の心が読めたであろう朔ちゃんは「姉さん経由で教えてもらったよ」とさらりと教えてくれた。
さらに口を開こうとする私より先に、何かあったときのために連絡先を交換してくださいとお願いしたところ承諾してもらえた、ということを説明してくれた。
ちなみに、橋本くんの連絡先もゲットしているとのこと。
「僕も明日は何もないから、二人でゆっくりしよ」
「うん…」
朔ちゃんに抱きついて目を閉じる。
胸の鼓動を聞いてると意識がゆっくりと沈んでいく。
「好きだよ、けいちゃん。おやすみ――」
耳元でささやかれた言葉に口元を緩ませながら、深い眠りについた。
_
ハッと目が覚めると部屋はまだ薄暗くて。
一人だと心細くなりそうだけど、今はそばに朔ちゃんがいて。
私を後ろから抱きしめる体勢で寝息をたてている朔ちゃんに安心する。
ああ、あったかい…。

