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Start Over Again
第10章 恋人というのは

時間を確認しようと少し身をよじって体を起こそうとすると、んー…と小さく声をもらしながら朔ちゃんも身じろいだ。
起こしちゃったかな、と様子をうかがうと半開きの目でボーと見つめてくる。
うっ…無防備すぎてかわいい…。
「ごめん、起こしちゃ…うわっ」
朔ちゃんの頭を撫でながら謝ると、グイッと腕の中に引き戻された。
「おはよ…けいちゃん」
私の頭頂部に顔をうずめながらつぶやく朔ちゃん。
寝起きの声は少しかすれていて低め。
かわいい顔とのギャップでドキッとしてしまう。
だけど、甘い雰囲気よりも先に。
「あの…朔ちゃん」
「んー?」
「私、お手洗いに行きたい」
「……ん。いってらっしゃい」
解放してもらって朔ちゃんの部屋を出る。
用を足してひと息つきながら昨夜のことを振り返ると、東に会ったことはもちろん嫌なことだけど、朔ちゃんの前で嘔吐してしまったことが申し訳なさすぎてため息が出た。
歯磨きして顔を洗ってリビングに戻ると、「僕もトイレ」と部屋から出てきた朔ちゃん。
スマホを探すと朔ちゃんの部屋で充電されていた。
時刻は午前5:30。
朝ごはんにはまだ早い、だけど何か温かいものが飲みたいってことでインスタントのココアを作ってると、しばらくして朔ちゃんが戻ってきた。
「甘い匂いする~ココア?」
「うん。朔ちゃんのも作ったよ」
「えっ、ありがと」
ソファーに座って静かに飲む。
フーフーと熱さを冷ます息の音やココアが喉を流れる音に混じって、外から鳥の鳴き声がする。
こんな穏やかな時間が、ずっと続けばいいのに。
「ね…朔ちゃん」
ん? とやさしい顔でこちらを見る朔ちゃん。
その顔を隣で見るのは、これからも私だけならいいのに。
「昨日ね…あの人と会って改めて感じたことがあるの」
「…うん」
私のいつもより低い声と真面目な顔を見てからか、朔ちゃんは何事かと背筋を伸ばす。
「あの人と結婚しなくて本当によかった、って」
「……」
「もし結婚してたら、朔ちゃんと再会できなかっただろうし、私の心はたぶん死んでたと思う」
黙ったまま、うなずいてくれる朔ちゃん。

