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Start Over Again
第10章 恋人というのは

「朔ちゃんに会えてなかったら、こんなに穏やかな朝を迎えることもなかったと思う。ココアもおいしいし」
ココアにチラッと視線を向けてふっと笑う朔ちゃん。
「私、朔ちゃんのこと大好きだよ」
「っ、僕も大好きだよっ」
食い気味に返してくれる朔ちゃんがかわいい。
「大好きだから…いろいろ考えちゃう。朔ちゃんのそばにいていいのかって」
「え…」
「朔ちゃんにはまだいろんな可能性があるわけで…」
「だめだよ」
「え?」
「年齢差を理由に別れるなんて、だめだよ」
ああ、私が別れ話をしようとしてると思ってるんだ。
「僕はけいちゃんがいいし、けいちゃんじゃなきゃ…」
「待って、朔ちゃん。話を聞いて?」
「…わかった」
渋々…といった様子でうなずいた朔ちゃんを見てココアの入ったマグカップをテーブルに置く。
「この世には私より若くてかわいい子なんてたくさんいて、朔ちゃんも目移りしちゃうこともあるかもしれないけど…」
朔ちゃんが首を横に振ってくれる。
「ずっと、私だけを見ていてほしいの」
もちろん、という意味でうんうんとうなずいてくれる。
「私と――家族になってくれませんか」
「……」
目を見開いて動きを止めた朔ちゃん。
私の予想では、もちろん! と即返事をしてくれるはずだったのに。
しばらく待っていると、一度ココアを飲んでから私をじっと見つめてくる。
「そ…それって…僕と結婚…してくれるってこと?」
「うん。私の旦那さんになってほしい。あっでも、今すぐってわけじゃ――」
朔ちゃんの目からこぼれ落ちる涙。
「えっ、朔ちゃん? ど、どうしたの!?」
あわあわと動揺する私を見て、朔ちゃんは笑う。
「ごめんね。急に泣いたりして…。これは嬉し涙」
「お…おう…」
「プロポーズしてもらえて嬉しくて」
「……」
えっ、あー…これプロポーズになるのか。
「けいちゃんの旦那さんになりたいし、僕の奥さんになってほしい」
ロマンチックの欠片もないけど、朔ちゃんが嬉しいならいいか。

