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Start Over Again
第2章 再会
「ちょっと疑問なんだけど、夢だと思ってたならさ、なんでうちに来なくなったの??」
あーー…それ聞きますか。
「……なんとなく?」
あからさまに目が泳ぐのが自分でもわかる。
「なに、なんとなくって。ごまかさないで、ちゃんと教えてよ。お願い…けいちゃん」
顔を近づけて私を見上げる朔ちゃん。
ぐぅぅ………
このタイミングでの上目遣いは、ずるい。
…もしかして、私が上目遣いに弱いってこと、朔ちゃんは知っているんじゃなかろうか。
「わかった。話す、話すから! ちょ、ちょっと離れて…」
両手で朔ちゃんの両肩を押すと、ほんの少しだけ顔が離れた。
もっと離れてよ、ともう一度押してもビクともしない。
ああ、これ以上離れる気がないのね…と諦めて口を開く。
「あの日からしばらくして、朔ちゃんち行ったでしょ?」
朔ちゃんがうなずくのを確認して言葉を続ける。
「その行った日、朔ちゃんの態度を確かめようとしたの。そしたら朔ちゃんいつもどおりすぎて、あれ…もしかして、夢だった? って。夢だと思えば、私もいつもどおりでいられる。と思って…。でも、そのあとも、どうしても考えちゃって……」
なにが? というように首を少しかしげる朔ちゃん。
「朔ちゃんのこと、ずっと考えてた。あの日の朔ちゃんの顔がずっと頭から離れなくて…このままじゃだめだと思って。会わなくなれば忘れられるかも、と思って…徐々に家に行く回数を減らしていきました…」
正直に話していくうちに朔ちゃんの顔が見れなくなって視線を落とす。
「確か……3月頃だったかな、最後に会ったの。仕事で少し離れたところに異動が決まった頃で。ああ、これなら自然と会う機会も減るし、もう一度会って、それで会うのは最後にしようって…」
朔ちゃんに好評だった、手作りのスイートポテトを持って行った。嬉しそうに食べてくれたのを思い出す。
「いま思えば、勝手だね。もう会えない。って、ひとこと言えばよかったね。ごめんね……」
本音を漏らすと泣きそうになるのはどうしてだろう。
ぐっと手を握り締めて、泣きそうになるのを我慢しながら手の甲を見つめる。
朔ちゃんは、黙ったまま。
静かな空間のなか、ギシッと座席がきしむ音がして、私から距離を離したのがわかった。
ああ……余計に顔が見られない。