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Start Over Again
第3章 契約書

「私が切羽詰まった状況だったから、気を遣って…」
申し訳なさ過ぎてシュンとしてそう言うと
「気を遣ったとかじゃない!」と咲子がめずらしく大きな声を出した。
そんな咲子に誰より驚いているのは朔ちゃんだ。
頭を垂れていたはずが、信じられないものを見たような変な顔をしている。
「けいは…大事な親友で、困ってたら助けたいもん。だから本当に私の部屋に来てもらおうと思ってたの。でも…」
「彼氏が入りびたるようになった?」
割り込んだ私に嫌な顔なんてせずに咲子はうなずく。
「彼がたまに来るとかなら、裸族でも…けいは大丈夫かなって思ったんだけど…」
いや、裸族はたまにでも無理。
そもそも、裸族が無理。
「最近ほぼ毎日…っていうか帰らなくなっちゃって。けいとルームシェアしてみたかったのに…これじゃ、けいと暮らすの無理だなって。でも、けいのことはどうにかしたくて、なるべく職場から近いとこでって考えたらうちの他のマンションは場所的に無理そうだし…」
えええ、職場のことまで考えてくれてたの?
と感動しながら、うんうん。とうなずいて続きを待つ。
「条件とかいろいろ考慮してもやっぱこのマンションが一番でさ。あっ、そうか。それなら朔とルームシェアしてもらえばよくない!? ここなら部屋も余ってるし、朔とはむかしからの付き合いだしそこまで気を遣うこともないだろうし、と思ったわけで」
なるほど。
まぁ…いくら、むかしからの付き合いとは言っても一応…お年頃な男女なわけで。気は遣うっちゃ遣うけどね。
「一応…私の部屋に来てもらった場合を想像してみたんだけど、かわいいけいに対して彼が変な気を起こすって結末しかなかったから、やっぱだめだなって。その点…朔なら超絶ヘタレだからけいも安心かなって思った結果、こうなりました」
さりげなく超絶ヘタレとディスられた朔ちゃんが「おいっ!」と言ったけど咲子はスルー。
その、ダブルブッキングをしたのと同じで、私の件も適当に対応した結果のことかなって一瞬考えたけど、咲子はちゃんと私のことを考えてくれてた。
その気持ちが嬉しい。
だけど、朔ちゃんといっしょに住むってのは困る。
「あの日」の約束を朔ちゃんは覚えてたし、何より私が朔ちゃんのことを意識し始めているから、いっしょに住むなんて心臓がもたない。

