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Start Over Again
第1章 引っ越し
ホームレスまっしぐらかと思われた私だったが、思わぬところで救われた。
幼なじみで親友でもある咲子にグチを聞いてもらおうと連絡したところ『じゃあ、うちにおいでよ』と提案され、あれよあれよと話が進み、咲子が住んでるマンションを内見することとなったのだ。
むかしから咲子は事あるごとに『うちにおいでよ』と言ってくれていたけど『でも、男は連れ込むよ』と言っていたので、いくら親友でもキワドイシーンを目撃したくないなぁと思い、丁重にお断りしてきた。
だけど、今回ばかりはそんなこと言ってられないため、ありがたく咲子の提案を受け入れさせてもらった。
そして、一週間後の内見日。
せめてもの感謝の気持ちでデパートで入手したちょっぴり高級な手土産を手に、約束の時間に遅れないようにと予定より15分前に到着した私は、これから内見するマンションを見上げて呆然としていた。
えぇぇ………!??
前日に咲子から教えてもらった住所はこの辺りでは高級住宅街と呼ばれているところで、もしかして咲子、間違えた? と不安になりながら何度も住所検索してたどり着いたのは間違いなく教えてもらった住所。
そびえ立つマンションを目の当たりにして、変な緊張感が高まる。
なにこのデカいマンション…
聞いてないよ、咲子……
じっとりとした嫌な汗をかいていると「けい~」と馴染みある声が聞こえてきた。
すっぴんに上下スウェット姿の咲子だ。
親友の姿に安心しつつ、まだ連絡していないのにどうして到着したことがわかったんだろう? と疑問に思ってると、私の顔を見て咲子はふふっと笑う。
「うちのマンション、コンシェルジュがいてね。『ご友人様が到着されたようです』って連絡がきたから迎えにきたよ」
コンシェルジュ……聞いたことはある。
確か…マンションのフロントに常駐してて入居者のサポートをしてくれる人のことよね。
「金持ちかっ!」
「金持ちじゃっ!」
思わずツッコんだ私に、すかさずノッてくれる咲子。
数分前までの緊張が嘘のようにクスクス笑ってリラックスしてきた私を見て「ほら行くよ~」と自然と腕を組んできた咲子に引っぱられるかたちで、ドキドキしながらマンション内へと足を踏み入れた。