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Start Over Again
第5章 飲み会
到着したのは有名な居酒屋チェーン店。
入店すると宴会向けの広い個室にとおされた。
うわー広い! とキョロキョロしていると、幸田さんがにこにこしながら近寄ってきた。
「恵香~」
私のことを仕事中は山之内、プライベートでは恵香と呼ぶ幸田さんに手を振ると、にこにこしていた顔がハッとした顔になり、頬を両手で挟まれて顔をまじまじと観察された。
「…恵香、何かあった? 1週間前に会ったときと肌つやが違う気がするんだけど……もしかして、彼氏でもできた?」
勘のいい幸田さんにドキリとする。
「いいえ、できてません…」
いろいろあったけど、彼氏は ”まだ” できていない。
「…そう、気のせいか。でも恵香、こんなに可愛いんだからそろそろ彼氏の一人や二人、作るべきだと思うよ」
「二人もいらないですよ~」
そう言って笑う私に、幸田さんも笑って頬から手を離し、中野さんのほうをちらりと見てから私へ視線を戻す。
「今日は中野おめでとう! の会だけど、恵香も楽しんでね。ただし、飲み過ぎないこと! わかった?」
「わかりました」
もしお姉ちゃんがいたら、こんな感じかな? と思いながらうなずくと、幸田さんは近くにいた橋本くんに「橋本くん、恵香のことよろしくね~」と言って中野さんのほうへ歩いていく。
幸田さんがある程度離れたのを確認して、すでに掘りごたつ席の端に座っている橋本くんの隣に腰を下ろすとメニューを渡された。
「見てみ、これ。店長おすすめ ”山芋鉄板焼き” めちゃくちゃうまそう。いや待てよ。こっちの揚げ出し豆腐もいいな…」
楽しそうにメニューを眺める橋本くんを見ながら
「ね、前から思ってたんだけど、なんで飲み会の度に幸田さんは私のことを橋本くんによろしく~って言うのかな?」
とずっと疑問に思っていたことを口にすると、橋本くんは数秒黙ったあと、いつもどおり愛想の良い顔で笑う。
「んー…そりゃあ、山之内と俺が仲が良いって知ってるからじゃない?」
「うーん…」
「あとは単純に山之内の酒癖が悪いから」
「…それは否定しないけど」
「だろー? 前の飲み会んときのさ~…」
思い出し笑いをしている橋本くんを眺めながら、幸田さんがお姉ちゃんなら…橋本くんはお兄ちゃんだな。なんて考えていた。