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Start Over Again
第5章 飲み会
乾杯の音頭の際に食べ飲み放題コースだと聞いてからは、せっかく来たんだし堪能しなくては! という気持ちになり、橋本くんと女子会のように楽しんでいた。
そして飲み会が開始されて約1時間。
橋本くんと私は、こういった席では飲むペースや量を調整してハメを外さないタイプ。
特に今日は飲みより食うほうを優先しているからかまだまだほろ酔い程度。
幸田さんがいる席のほうはすでに出来上がっている人ばかりで、コミュニケーション能力が高い同期数名が相手をしていた。(正しくは、絡まれている。)
本来なら私もあの場でお酌やら、しなきゃなんだろうけど…
飲み会開始早々にビール瓶を持って幸田さんへ近寄ると「今日はしなくていいの! ほら、向こうで飲んでなさい!」と追い返された。
でも実際、同期たちは絡まれているわけで。
加勢に行く勇気がない私を許して…。
と内心で謝りながら、あれ…もしかして。と気づく。
こういう飲みの席で私が絡まれないのは…隣に橋本くんがいてくれるから?
思い返してみれば…
今まで私に絡みに来た人たちは私があまり良い反応をしないとわかると、隣にいる愛想の良い橋本くんをターゲットにしていた気がする。
愛想が良く、受け流し能力もある橋本くんだから『よろしくね~』と言ってくれてる…?
いや…私の考えすぎかもしれないけど、本人に確かめるのも野暮だよねぇ…。
ちらりと隣に目をやると、山芋鉄板焼き2皿目を黙々と食べている橋本くん。
そんな彼に脈絡なく「いつもありがとう」と言うと、橋本くんはこちらをちらりと見て「んあ?」とだけ言って再び山芋鉄板焼きと向き合う。
夢中か! 確かに美味しいけど。
くくくっ…と橋本くんに笑っていると、不意に肩をポンッと触られた。
ん? と振り返ると見知らぬ男性。
…ああ、幸田さんたちの友人の一人か。と思っていると、その男性が私の隣に腰を下ろす。
「ねぇ~名前なんてゆーの?」
だいぶ酔ってるのか喋るテンポが遅い。
「山之内です」と愛想なく言うと
「違う、違うよ~下の名前は?」と言って無遠慮に二の腕を掴んできた。
え、なにこの人。
急に触ってくるとか…気持ち悪…。