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Start Over Again
第5章 飲み会
嫌悪感に鳥肌が立つ。
「あの、手、離してください」
酔っぱらい相手にはまず冷静に対応。と誰から聞いたのかわからない処世術を試してみるも
「だから~名前教えてって言ってんの~」と聞く耳持たない相手にはどう対応すればいいのか。
いやいや、名前どうこうの前にとりあえず手を離してほしい。
そう思ってると、ズンと左肩に何かが乗った。
なぜか橋本くんのあごが左肩に乗っかっている。
「慎太郎です~ ”しんちゃん♡” って呼んでください~」
裏声で名前を言う橋本くんに酔っぱらい男はビクッとして動きを止める。
「い、いや、君の名前は別に…」
「え~ひどぉい。しんちゃん♡ って呼んでくれるまで逃がしませんよ~?」
「うるさいっ! 俺はこの子がっ…」
酔っぱらい男が私の二の腕を引いて体ごと自分のほうへ引き寄せようとしたところを、大きな手に阻止される。
「やだーセクハラですよー。ちなみに龍二です。りゅうちゃんって呼んでくださいー」
低音ボイスで棒読みする須藤さんが、酔っぱらい男に掴まれた二の腕を解放してくれた。
「くそっ、離せ!」
須藤さんの手を払って酔っぱらい男は元の席へ戻っていく。
ふと幸田さんと目が合って、両手を合わせて ”ごめん” と口を動かすのがわかった。
”大丈夫です” という意味で手と首を振ると幸田さんは一度うなずいてから視線を戻し、友人らしき男性に何か話しかけていた。
するとその男性が酔っぱらい男を引きずるように抱えて個室から出ていく。
ありがとうございます、幸田さん。
これで安心して飲み食いできます…!
幸田さんの気遣いに感謝していると、隣に須藤さんが座った。
「須藤さん、ありがとうございます」
お礼を伝えると「いや、別に」とそっけない態度だけど助けてもらえたことに変わりない。
怖い人って思い込んでたけど、優しい人なのかも…。
簡単に判断しちゃいけないな、と反省しつつ橋本くんの方へ向いて「橋本くんもありがとう」と言うと、枝豆を食べる手を止めて小鉢を渡してきた。枝豆が入ってる。
「どこにでもああいう酔っぱらいいるからさ、気にすんな。さ、たんとお食べ。…あ、すみませーん! 注文いいですかー!」
そう言って3皿目となる山芋鉄板焼きを注文しようとする橋本くんがおかしくて自然と笑っていた。