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Start Over Again
第5章 飲み会
それからは安全な時間を過ごせた。
左隣に橋本くん、右隣に須藤さん、という並びで座っている私に絡もうなんて人はおらず、幸田さんの友人たちからちらちらと視線は感じていたものの、あまり気にせずに美味しい食事とお酒を堪能した。
そろそろお開きにしますか。というタイミングでお手洗いに立ち、なんとなくスマホを触ると朔ちゃんから着信とメールが届いていた。
【これに気づいたらすぐ電話して!】とのことで、お手洗いを済ませて電話をかけるとすぐに繋がる。
『けいちゃん! 今どこ!?』
なぜか焦ってる様子の朔ちゃんに
「どこって…○○駅近くの○○って居酒屋にいるよ。あ、もうお開きになるけど」と言うと
『わかった! 帰らずに店の中にいて!』と言われ通話終了。
え? 帰っちゃだめなの? と思いながら個室へ戻ると会計前の集金が始まっていた。
慌てて財布を取り出し、幸田さんへお金を渡そうとすると「あ、恵香の分は貰ってるよ」と言う。
「え?」
「須藤くんが持ってきたよ」
「えっ!?」
何で須藤さんが? という気持ちで須藤さんの姿を探すけど、どこにもいない。
「奢られるのがアレなら須藤くんに返したらいいよ。先に出てますって言ってたから、たぶん店の外にいるはず」
幸田さんの言葉に「わかりました!」と言って足早に店外を目指す。
店を出ると須藤さんと橋本くんが店の向かいにある自動販売機の前に立っていた。
近づきながら「須藤さん!」と声をかけると、私に気づいた橋本くんが「コケるなよー?」とのんきな声を出す。
「あのっ、何でお金!」と簡潔すぎる言葉を発した私を須藤さんはじぃーっと見つめ「年上だから」とひとこと。
「じゃあ、橋本くんの分も出したんですか!?」と詰め寄ると「うん」とうなずく。
ここで橋本くんの分は出してないって話だったらお金渡せたのに…!
誰かに奢ってもらうのは気が引けて好きではない私が納得いかない顔をしていると、須藤さんが「じゃあさ」と口を開く。
「お金は返さなくていい。その代わりと言ってはなんだが、頼みがある」
「頼み…ですか?」
どんな頼みだ…と緊張が走る。
「俺と、デートしてくれないか?」
???
須藤さんの言葉をうまく咀嚼できずに固まった。