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Start Over Again
第7章 ダブルデート

「もしもし。うん、よろしく」
それだけ言って電話を切ると食事を再開する咲子。
橋本くんも私も何事? という顔はするものの、なんとなく聞けずにいると、新しい紙皿を持ってきた須藤さんが橋本くんに渡してから私を見た。
「味付けどう?」
「あ、めちゃくちゃ美味しいです!」
にこっとして答えると「良かった。もっと焼いてくる」とグリルへ向かう須藤さん。
真顔だけど、いつもより声のトーンも高い気がして、須藤さんが楽しそうなのが伝わってくる。
そんな須藤さんの背中を見ていると、グリルの奥のほうからスーツを着た人たちがこちらへ歩いてくるのが見えてギョッとする。
「ねぇ、誰か近づいてくるんだけど…」
コソコソと咲子と橋本くんに聞こえる声で言うと、橋本くんがグリルのほうへ目を向けるのと同時に咲子が口を開く。
「ああ、来たわね。郷田!」
ゴウダ…? と思っているとスーツの一人が競歩のようなスピードで前進してくる。
あっという間に咲子の横に到着すると深々とお辞儀をした。
「咲子様。大変お待たせいたしました」
「大丈夫よ」
咲子が答えると郷田と呼ばれた人がパチンと指を鳴らす。それを合図に残り二人のスーツの人がグリル横に立つ。
「失礼いたします。ここからは私どもが焼かせていただきます。須藤様もどうぞお食事をお楽しみください」
ガタイのいい須藤さんが郷田という人に強引に椅子に座らされているのを見てから咲子に目を向ける。
「…咲子。この人たち誰なの」
「私のボディーガードたち」
ボディーガード……
そうか、忘れがちだけど咲子って実はお嬢様だったな。
「せっかく4人で来たんだし、みんなで食事したいでしょ。それにまだ、乾杯もしてないし」
さらっと言う咲子にコクンとうなずく。
すぐさま立ち上がってクーラーボックスをテーブル横まで引っぱってくる。
「須藤さんも橋本くんもまずは食事を楽しみましょう。みんなでわいわいしながら食べるほうが楽しいですよね?」
咲子の言葉に「そうだな」「確かに」と二人がうなずくのを確認して飲み物を手渡す。
乾杯! と言ってカンッと軽くぶつけ合った炭酸飲料。
味は変わらないはずなのに、普段よりずっと美味しかった。

