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Start Over Again
第7章 ダブルデート
ん? と反応する私ににこにこしながらケーキを皿に乗せていく郷田さん。
「それぞれの好みを把握されているとは、素晴らしい。そう思いまして」
「ああ…自然と覚えちゃったんですよ」
新人の頃は店舗ではなく本社勤務で、事務作業を主にお茶汲みなどの雑用も任されていたから、自然と…というよりは覚えざるを得なかった。と言うべきか。
「山之内様というご友人がおられて咲子様は幸せ者ですね。もちろん須藤様と橋本様にとっても」
「…そうですかね? 喜んでもらえるなら嬉しいですけど」
「もちろん喜んでくださいますよ。では行きましょうか」
照れ笑いをする私に微笑んで配膳ワゴンを押してくれる郷田さん。
そのあとに続いた。
郷田さんの言うとおり、好みの飲み物を準備してきた私に三人とも喜んでくれた。
ちらりと郷田さんに目を向けると他の三人に気づかれないようにこっそりと親指を立ててグッドサインをしてくれていた。
数週間前は何でダブルデート!? と思っていたのに今は楽しいから不思議だ。
日が沈み出した空を眺めながら、来て良かったなぁ…とカフェラテをすすっていると
「山之内。ちょっといいか」とあっという間にケーキとコーヒーを完食した須藤さんに手招きされた。
「何です?」とカップを置いてたずねると
「少し二人で話したい。リビングに行こう」と部屋を指差す須藤さんに素直についていく。
テーブルを挟んだ位置でそれぞれソファーに腰かけると「今日はありがとう」と須藤さんが口を開く。
「山之内が了承してくれなかったら、ここには来れなかったから感謝してる。ありがとう」
ペコッと頭を下げる須藤さんに慌てる。
「えっ、そんな、やめてください。私も楽しかったので、お礼を言われることではっ」
「いや、おかげで自分の気持ちに気づけたから。…それでその…もし良ければなんだが、また相談に乗ってもらえないか?」
「相談…?」
「ああ……恥ずかしながら…誰かに自分から好意を抱くのが初めてで…」
ああ、なるほど。
「相談相手が私でいいんですか?」
「ああ、山之内じゃなきゃだめなんだ」
じっと真剣な眼差しで見つめられて思わずドキッとする。