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Start Over Again
第8章 悪夢 と デート
「ああ、そういうこと。いいよ、ぜんぜん。僕の前ではいくらでも泣いていいよ」
「え…」
「泣いちゃうけいちゃんも含めて、好きだから」
「…うそ…だ」
泣いてる女なんて、面倒に決まってる。
「嘘なんかじゃないよ。けいちゃんが泣きたくなったら、僕がそばにいてあげる」
「…」
「だから、泣きたくなったら僕のそばに来て。こうやってまた抱きしめてあげるから」
「…っ……」
「忘れないで。悲しいことがあっても、僕がいるってこと。僕はけいちゃんの味方だよ。忘れないでね」
朔ちゃんの言葉が脳内を占領していく。
大人になってから、泣いてもいいよ。と言われたのなんて初めてで、どう反応すればいいかわからない。
だけど気が楽になったのは確かで、体の内側から熱が徐々に引いていく感覚に安堵する。
そっと顔から手を離して、ぐちゃぐちゃになった顔を自分の服で拭き始めると「えっ、待って待って!」と焦った様子で朔ちゃんがティッシュを箱ごと渡してくれた。
「服なんかでゴシゴシ拭いちゃだめだよ。ティッシュで優しく拭いて。なんなら僕が拭くけど…」
ティッシュをすでに数枚持って拭く気満々でいる朔ちゃんの手首を掴んで首を横に振る。
「だめ。ぜったい、だめ」
「ケチだなぁ」
「なっ…!」
なんでケチなのよ! と思わず顔を上げてすぐに後悔する。
「やっと顔見せてくれた。ああ…想像以上にぐちゃぐちゃになってるね…顔も赤くなってる……はぁ…可愛い…」
ぐちゃぐちゃの顔を見て嬉しそうに微笑んでるのはもちろん、口から出てくる言葉もおかしくて、嫌な予感しかしない。
「ま…待って、朔ちゃ…」
離れようとしても抱きしめられているから無理で、抵抗なんてお構いなしに朔ちゃんが私の頬を舐める。
「ちょっ…!」
「これがけいちゃんの涙の味か…」
「やっ、やめっ…」
ぺろぺろと犬のように執拗に舐められて、されるがままギュウゥゥ! と目を閉じた。
「…もっと…舐めたい…」
呼吸を荒くしながらそんなことを言う朔ちゃんに「へ、変態っ!!」と叫んで、握りこぶしでお腹あたりを思いっきり殴った。