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Start Over Again
第8章 悪夢 と デート
しばらくお互い黙ったまま抱きしめ合っていた。
朔ちゃんの匂いを強く感じながら、
「……朔ちゃん。今度、デートしない?」
と、ふと頭に浮かんだことを口にすると、ガバッと体が引き離された。
「…デ、デート…??」
「う、うん。デートしたいなって思ったんだけど…」
私がそう言うと、へな~~と力が抜けたようにしゃがみこんでしまった朔ちゃん。
何事かと同じようにしゃがみこんで「…嫌?」とたずねると「嫌じゃない! むしろ嬉しいぃぃ…」とへにゃへにゃ声が返ってくるが、うつむいたまま顔を見せてくれない。
「どこか、行きたいとこある?」
「……行きたいとこばっかで迷う」
「例えば?」
「えっと……映画とか遊園地とか…弁当持って公園とか…ショッピングモールでブラブラするとか……極端な話、いっしょにいれるならどこでもいい…」
耳を少し赤くしてボソボソと言う姿が可愛くて頭をヨシヨシしてみると、急に顔が上がって手を掴まれた。
「なんか…子ども扱いしてるでしょ」
「え、してないよ。ただ…可愛いって思っただけで」
「可愛いって言われても嬉しくない…」
すねたように頬を少しふくらませるその顔が可愛い。
「けど、デートできるからいいや。で、いつにする!? けいちゃん次いつ休み!?」
頬をふくらませたのは一瞬で、すぐにわくわくしたように目を輝かせて前のめりになる朔ちゃん。
「…確か、来週の水曜…」
「その日にしよう!」
「えっでも…学校とかバイトとか大丈夫なの?」
「うん。どうとでもなるから大丈夫」
あまりにも簡単に日付が決まってしまい、本当に大丈夫なのかな…と気になっていると朔ちゃんが満足げにため息を吐いた。
「はぁぁぁぁ……めちゃくちゃ楽しみ」
「だね。私も楽しみ」
にこっと微笑むと、朔ちゃんがまたため息を吐き
「はぁぁぁぁ…頑張れ僕…」と意味不明なことを言う。
「ん?」
「いや、なんでもない。…そろそろ寝よっか。ほら立って」
「あ、うん」
はぐらかすように立ち上がり私のことも立ち上がらせてくれた朔ちゃんに手を引かれてリビングに戻った。
「おやすみ」
「おやすみ」
言葉を交わして、それぞれの部屋に入る。
嫌な夢をみたことなんて忘れて、穏やかな気持ちで眠りについた。