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Start Over Again
第8章 悪夢 と デート
約束した水曜日はあっという間にやってきた。
今日のために大学の授業を調整してくれた朔ちゃんは午前中は授業を受けてくるとのことで、昼からデートすることになった。
『車で行くし家で待ってていいよ』と朔ちゃんは言ってくれたけど、帰ってくるのを家で待つより、私が駅まで行けばその分時間短縮になるから、という理由で最寄り駅から2つ先の駅で待ち合わせすることにした。
部屋を出る前にカーテンを開けて外を覗く。
まだ昼前だというのにほの暗い。天気予報によると昼過ぎ頃から雨になるという。
あんまり降らないといいけど…。
そう思いながら戸締まりをして傘を持って家を出た。
家から最寄り駅までは徒歩10分もかからない距離ですぐに到着。
平日の昼間ということもあり、通勤や帰宅ラッシュ時に比べれば人は少ないようで電車内はすいていた。
2つ先の駅で降りるからと座らずにドア付近に立って揺られながら、電車に乗るのいつぶりだろ…と考えていると、カランコロンと音を立てながら何かが足元に転がってきた。
何だろう? と思って見つめていると「あー! ママ、ママ、りっくんおもちゃおとしたよ~」と可愛い声が耳に届く。
ああ、子ども用の玩具か。そう思いながら拾って視線を向けると、可愛い女の子が母親に抱っこされながら私が今拾った玩具を指差している。
その隣にはベビーカーに乗ったこれまた可愛らしい男の子の姿。この子のかな? と思いながら近寄っていく。
拾おうと思ったものの先に私に拾われて焦っている様子の女性は母親というには若く見えた。
おそらく20代前半くらいだろうか。
「どうぞ」と渡すと「すみませんっ、ありがとうございます!」とペコペコと頭を下げた。
そんなに必死に謝らなくても…と思いながら「いえ」と言って元の位置に戻る。
しばらくすると降りる予定の駅に到着した。
向かいのドアに向かいながらなんとなくちらりと先ほどの母子へ目を向けると、女の子と目が合い、にこっと笑いながら手を振ってくれた。
その様子が可愛すぎて自然と笑顔になり、手を振り返しつつ電車を降りた。
可愛かったなー…子どもかぁー……とむかしのことを思い出しそうになり思考を食い止めるように頭をブンブンと振る。
いやいやいや、今はそんなことよりデート! と足早に改札口へ急いだ。