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Start Over Again
第8章 悪夢 と デート
改札口を出て少し歩き、道路沿いの停車可能エリアへ向かう。
もう着いてるかな…と思いながらキョロキョロしていると「けいちゃーん」と朔ちゃんの声。
声のしたほうへ顔を向けると、停めた車の横に立って手を振っている。
手を振り返しながら歩いて行き、手の届く範囲まで近寄ってからやっと気づく。
…あれ。なんか今日の朔ちゃん……かっこいいぞ。
無地のシャツにテーパードパンツというシンプルな組み合わせだけど、元のスタイルがいいのもあってすごく似合ってる。
髪もセットしたのか普段は前髪で隠れているおでこが出ていて、いつもと雰囲気が違う。
「お待たせ。待った?」とドキドキしながらたずねると
「ううん。さっき着いたとこ…」と言いながら目を上下に動かしてまるで観察するかのようにじっと見てくる。
デートとはいえ、気合いが入りすぎてるな、と思われるのも嫌だしなぁと散々迷った挙句、七分袖カットソーにフレアスカートというシンプルで楽なものにした。
変ではないと思うけど、だめだったかな…と少し不安になりながら黙っていると
「…可愛い。スカートで来てくれるとは思わなくて…感動してる」という予想以上の言葉を貰えて照れてしまう。
「家でも仕事でもスカート履かないから、デートくらいは履こうかなって…」
「うん、似合ってる。すごく可愛い」
「さ…朔ちゃんも似合ってる。髪も…かっこいい…と思う」
気持ちをストレートに言葉にするのが苦手な私がモジモジしながら言うと、朔ちゃんまでモジモジし始めた。
「そ…そうかな。僕も…普段はほぼセットしないけど、初デートだからしてみようかなって…」
「そ、そっか…」
「う、うん…」
お互いに少しうつむいて黙り込む。
まさか初めからこんな甘酸っぱい空気になるとは思わなくて、どうしたらいいかわからない。
「……じゃ、行こっか」
「う、うん。あ…ありがとう」
私の手を取って車の横まで誘導し、助手席のドアを開けてくれた朔ちゃんにお礼を言って乗り込む。
そっとドアを閉めて運転席に乗り込んだ朔ちゃんを横目で見て、引っ越しのとき以来の横顔にドキドキする。
ああ……かっこいいなぁ。
「シートベルトした? 行くね」
「…うん」
内心キュンキュンしながらも冷静にうなずくと車が動き出した。