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Start Over Again
第8章 悪夢 と デート
到着したのは数ヶ月前にオープンしたショッピングセンター。
複数の小売店舗や飲食店、美容院、歯科医院、旅行代理店など多くの店舗が入居しており、その一つに映画館もある。
天気が雨なら映画にしようと決めてきたが、何を観るかまでは決めてなかったため、電光掲示板に映された上映作品一覧を見ながら迷っていた。
「この中なら、ゾンビかホラーがいいんじゃないの?」
うーん…とうなる私の横で朔ちゃんがもらした言葉に驚く。
「えっ?」
何で私の好みを知っているのか。そう思いながら目を見開くと、それに気づいて軽く笑う。
「姉ちゃんに聞いております。けいちゃんが恋愛ものにはあまり興味ないってこと」
「何でも話してるな、咲子」
「あー…姉ちゃんが話してるっていうより、僕が聞き出したってのが正しいかな。うん。で、ゾンビとホラーどっちにする? 僕もどっちも好きだからけいちゃんが決めていいよ」
あまりにもサラッと言われて、聞き出した。という部分にツッコむタイミングを見失う。
「じゃ…ゾンビにします」
「ゾンビね。座席は前、真ん中、後ろ、どこがいい?」
「後ろかな」
「わかった。チケット買ってくるから待ってて」
「えっ、私も…」
「僕がチケット。けいちゃんは飲み物お願いしていい? 僕はコーラのSサイズでよろしくね」
私の言葉を待たずにさっさと窓口のほうへ行ってしまった。
チケット代と飲み物代じゃぜんぜん違うじゃん…と思いながらも素直に注文カウンターへ向かう。
注文した飲み物を持って壁側で待ってるとチケットをヒラヒラさせながら朔ちゃんが戻ってきた。
「思いきって一番後ろにしたよ」
「ありがとう。お金いいの?」
「うん。気になるならあとでお菓子買って」
「お菓子って。安上がりだなぁ。お菓子でもアイスでも何でも買ってあげる」
「ほんとに? 何にしよっかな~」
にこにこしながら私の手からコーラを抜き取り、行こうかと目配せして歩き出す朔ちゃんの後を追ってシアター内へ入った。
今から観る作品は公開から数週間立ってるのもあってかシアター内の人はまばらだった。
まだ明るい通路の階段をのぼっていくと本当に一番後ろの席で、後ろのほうはあるけど一番後ろは初めてだな…意外といいかも。と思いながら席に座った。