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Start Over Again
第8章 悪夢 と デート
「想像以上に良かった…」
「だね。あんなものすごいスピードで走ってくるゾンビ怖すぎ。僕ならすぐゾンビになっちゃうな」
「あはは、私も」
感想を言い合いながらシアターを出ていると、朔ちゃんが自然と手を繋いできた。
それを振りほどくことなく、ゆっくり歩きながら映画館エリアをあとにする。
このタイミングで手を繋ぐって……やりますな…!?
朔ちゃんのテクニックに内心でやられていると、当の本人はなんでもない顔でスマホを触っている。
「16時前か…ちょっとお腹すかない?」
「うん、すいた。何か軽く食べたい」
「おっけ。確かこの先のエリアにコーヒーショップがあったはず。そこでいい?」
「うん。ちょうどカフェラテ飲みたい気分だった」
「あはは、そっか。なら行こ」
気づけば和やかな空気になっていて自然と笑っていた。
ウインドウショッピングをしつつ到着したコーヒーショップは時間帯的にも人が少なく、端のほうの広めのテーブル席に座ることができた。
朔ちゃんは抹茶ラテとスイートポテト、私はカフェラテとフルーツタルトを注文。
意外とサイズが大きく、食べ応えのあるフルーツタルトをひとくち口に含むと一瞬で幸せな気分になる。
「美味しい?」
抹茶ラテを飲んで口角を上げる朔ちゃんにモグモグしながらうなずく。
「スイートポテトも美味しいよ。ほら食べてみて」
スプーンですくったスイートポテトを差し出されて、一瞬、あーんするの? と躊躇するものの、甘いものの誘惑には勝てずパクッと口に含む。
噛まなくてもいいくらいなめらかで、すぐに舌の上で溶けていった。
「……うん。美味しい」
「ね。僕もタルト食べたいな。あーん、ってしてよ。ほら、あーん」
いたずらを思いついたように悪い顔をして口を開ける朔ちゃんにドキドキしながらもタルトをフォークに乗せてそっと差し出す。
挑発するように私を見つめながらゆっくりとタルトを口に含む動作がなんだかえっちで…顔が熱くなるのを感じた。
「うん。タルトも美味しいね」
にこっと微笑む朔ちゃんはもういつもどおりで。
あーん。くらいで照れてる自分が恥ずかしくなり、それを隠すようにカフェラテを喉に流し込んだ。