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妹をこんなにしたのは僕のせい?
第2章 混乱
「ちょ、ちょっと待って!女房と別れてずっと一緒にいるって言ったらうれしいって言ってたでしょ?」

「チ◯ポ入れてもらってたら、いつだってうれしいわ。いったい何の話してるのよ、さっきから・・・
私は奥さんと別れて付き合って欲しいなんか一言も言ってないわよ」

しおりには妙な癖があった。
薄っらと笑みを浮かべながら、飲みかけたオレンジジュースの入ったグラスを回している。
何気ない仕草であるが言葉がどこか尖っている。
怒っているのだ。
それから折り畳んだ一万円札を取り出すと皺を伸ばしてテーブルに差し出した。

「何?」

「いつかのタクシー代。本当にこんなの要らないから」

「取っときなよ。それはほんの気持ちだから」

僕も男も黙ったままでただ四つに皺のついた一枚の札をながめていた。

「お兄ちゃんと会わなきゃ良かったね。両親に会いというのだったら、真っ直ぐうちに来て会えば良かったのに・・・
そしたら、また違う気持ちになってたかも知れない」

そういうと、しおりは隣に座る僕の腕を取った。
これ見よがしにおっぱいを押し付けてきたのはわざとだったかも知れない。
まもなくして、僕らはうやむやの内に解散となった。
勘定は男がそそくさと済ましてしまったけど、僕はあえてそうさせてやった方が彼には救いかと思えた。
それから、たぶんだけどテーブルの上の一万円札はそのまま置き去りに出て来たと思う。

家から喫茶店まではそれほど遠くはなかったけど、歩いて向かえば結構な距離はあった。

「アニぃ!チューして」

「道端でか?」

「家でできないじゃない」

「してるじゃないか」

男は僕ら兄妹の関係を知ってるらしい。
妻と別れて女子高生と付き合おうとした三十男が先に僕と会って話し合っておこうとしたのは結果的に間違った選択だったのだろう。
僕はまだしおりにだけ言ってない事があった。
子供部屋の共同生活はやはり手狭なので、僕はひとりアパートを借りて家を出ようと考えていたのだ。
そこには兄妹関係の感慨も少なからず入っていた。
両親に打ち明けた時、その事はきっと理解したのだと思う。
父親は「しおりの事は大丈夫だから」と言った。それはたぶん学費の事だけではなかったと思う。



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