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木の実を集めて君にあげる
第3章 再会したけど片想いは続く
んっ?
帰るってどういうことかなと思って訊いてみると、
都内で紘子ちゃんと二人暮らししていると言った。

瑞樹ちゃんのお父様はほんのり紅い顔で、
「飲んで帰って来たから送れないな。
運転手も返してしまったし」と言うので、
自分が送って行くと言ってみた。

途中で幼稚園にも寄れるしと言うと、
お母様が、
「あら。
だったらお願いしたら?」と言ってくれた。


小さい犬を入れたキャリーバッグを後部座席に置いてから、
お父様は瑞樹ちゃんに何かを言ってハグしていた。

「じゃあ、悠介くん、
頼んだよ?」と言われて、
僕は少し緊張して頷くと、
軽くクラクションを鳴らして瑞樹ちゃんの家をあとにした。


ご両親はずっと手を振りながら立っているのがミラー越しに見えた。


住宅街の出入り口のゲートを越えて少し走らせてると、
瑞樹ちゃんが一輪挿しの薔薇を見て小さい声で呟くように言った。

「クォーター咲きの薔薇、
珍しいわね?」


えっ?何?
クォーター咲き?
僕は心の中で言葉の意味を考えてみたけど、
僕のボキャブラリーのなかにはその単語はなかったから、
前を向いたまま、少しぶっきらぼうに、
「これ、瑞樹ちゃんの為に買ってきたんだ」と言うと、
「えっ?」と瑞樹ちゃんが僕のことを見ているのを感じた。

視線が痛いよ。
恥ずかし過ぎる。

でもなんとか、
「一番、瑞樹ちゃんぽいヤツを選んだつもり」と言って、
笑うことに成功した。


瑞樹ちゃんは下を向いて、
もしかしたら少し困惑してるみたいだった。


「シャンプーかな?
良い匂いしてるよね?
もうすぐ母さんの誕生日でさ。
プレゼント、何にしようか困ってて。
なんてヤツ?」と、
誤魔化すように言ってみたけど、
誕生日プレゼントなんて、
本当はしたことはない。

「誕生日もクリスマスも、
子供たちのものだから、良いのよ」と言われてたから。


「ロクシタンのよ?」
と小さい声で言ったけど、
また、頭の中で、ハテナがグルグル飛び回る。

ドラッグストアとかに並んでいるヤツに、
そんなのあったっけ?

良いや。
とにかく暗記して、後でググろう!
と思った。


瑞樹ちゃんのことは、
本当に知らないことばかりで、
楽し過ぎる。
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