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木の実を集めて君にあげる
第6章 ラブホ突撃顛末記
そして、その日、
お寺の駐車場で、
本当に大切な宝物を託すように、
宇田川亮平に瑞樹ちゃんを預けて、
車を出した。


本当は、連れて行ったりしなければ良かった。
僕は心から悔やんでいた。

だから、独りで受けた模試は、
さっぱり考えたりも出来なかった。

時間がなかなか進まない。

昼メシも食べれないまま、
淡々と時間をやり過ごして、
時間を調節する為に、駐車場に停めた車の中で、
音楽を聴いてから、
約束の時間ぴったりにお寺に行った。


宇田川亮平は約束通り、
瑞樹ちゃんを連れて駐車場に来てくれたけど、
瑞樹ちゃんは泣きながら何度も何度も、
宇田川亮平にキスをしていた。


「泣きたいのはこっちだよ?」と心の中で呟いたつもりだったけど、
声に出てしまっていたみたいだった。


瑞樹ちゃんは車の中でも俯いたままで、
手をギュッと握り締めて泣いているようだった。


車の中が、
お線香の強い匂いと、
宇田川亮平の匂いが満ちていくのを感じて、
僕は発狂しそうになった。


コンビニで車を停めて、
「ちょっと飲み物、買ってくる」と言って車を降りたのは、
その匂いで、吐きそうになっていたからだった。


瑞樹ちゃんにこびりついた匂いを、
洗い流さないと。


車に戻って、発進させる。

やっぱりダメだ。
この匂い、辛すぎる。


泣きそうな気持ちを押し殺して前を見ながら僕は言った。


「瑞樹ちゃん、そのまま帰るとヤバいよ?
凄く匂うもん」


でも、流石に宇田川亮平の匂いがするとは言えないから、
お線香の匂いが酷いから、
シャワー浴びた方が良いと言って、
インターで降りて、
いくつかある中で比較的大人しくて新しそうなラブホに入った。
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