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木の実を集めて君にあげる
第7章 妊娠したけどあいつは居ない
エンジンを切った。
いつもなら車を降りて、助手席を開けてあげる為に車を降りるのに、
僕がそのままハンドルに手を掛けているので、
瑞樹ちゃんは小首を傾げながら僕を観た。


「あいつに会ったんだね?」と言いながら、
そっと瑞樹ちゃんの右手に光る華奢な指輪を撫でてから、
そっと手を握った。


瑞樹ちゃんは小さく息を呑むと、
そっと頷いた。


「セックスもした?」とストレートに訊くと、
戸惑った顔をするので、
更に、
「ちゃんとゴム、使った?」と訊いた。


瑞樹ちゃんは黙り込んでしまう。


「妊娠してたらどうするの?」と静かな声で言う。

言った瞬間に、
胸が痛くなって、
手も脚も震えそうになるのを、
歯を食いしばって堪える。


瑞樹ちゃんは小さい声で、
でもきっぱりと、
「授かってたら産みます」と言った。


産みたい、
じゃなくて、
産みますと意思表示した。


僕はただ、
それを受け入れるしかない。


「判った。
おやすみ」と言って、
握っていた手を離すと、
車から降りていつものように助手席のドアを開けてあげた。

後部座席から重たい瑞樹ちゃんの鞄を取って一緒にドアまで送る。


瑞樹ちゃんのお母様に夕食を勧められたけど、
「ちょっと試験勉強があるので」と言って断って、
殊更、明るい声で、
「瑞樹ちゃん、また、明日ね?」と言って笑顔を見せてみた。


上手く笑えてたかも判らなかったけど、
そのまま、どうやって運転したかも覚えてないけど、
気付いたら自分の部屋のベッドに横になっていた。


あいつと瑞樹ちゃんが裸で絡み合ってる夢を見て、
目が覚めて、
歯を食いしばって泣いた。


そして、さっき、瑞樹ちゃんの話を聞いた時、
そのまま、瑞樹ちゃんをホテルに連れて行って、
あいつと同じように、ゴムをしないでセックスすれば良かったのかと思った。

それなら、瑞樹ちゃんが妊娠してても、
自分の子供だって言える。



でも…。
そんなことをしたら、
瑞樹ちゃんを傷付けて、
嫌われるだけだ。


それに、ゴム無しでセックスしたからといって、
妊娠するとは限らない。


自分に都合の良いように考えようとしては、
また、うつらうつらして、
嫌な夢を見た。




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