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木の実を集めて君にあげる
第7章 妊娠したけどあいつは居ない
合鍵で瑞樹ちゃんがドアを開けた瞬間、
もわっとした澱んだ空気を感じた。

声を掛けて室内に入るけど、
人の気配は全くない。

寝室も軽くベッドメイキングはされてるけど、
誰かが寝ているようには見えない。

室内は全体的に少し散らかっている。
でも、人が暮らしているようには感じられない。


「えっ?」と呟いた瑞樹ちゃんが、
へなへなと力なくソファに座り込む。


僕はキッチンや浴室、トイレを見て廻る。


キッチンは最後に使われたのはいつか判らないけど、
伏せたままのコップはカラカラに乾いていて、
シンクの中も水滴もなく、
少し埃っぽい。

浴室も同じで乾いた水滴の跡がウロコのようになっている。

トイレは、便器の中の水が減って、
輪っかのような水シミがついてて、
少しだけ悪臭がする。


明らかに無人。
誰も住んでない部屋だった。

窓を開けて空気の入れ替えをしながら、
「ずっと留守してるみたいだね?
他に共通の知り合いとか、居ないの?」と訊くと、
瑞樹ちゃんは鞄から手帳を出して名刺を見ながら電話をする。


「宇田川は退職しました」と言う声が、
僕にも聴こえた。


少し固まった後、
携帯のアドレス帳を見て、
もう一件、電話をしてたけど、
留守電みたいで、
名前を名乗りながら折り返しを頼むメッセージを入れていた。




瑞樹ちゃんが震えながらお腹を押さえると蹲ってしまった。
涙を堪えながら、
「うっ。
お腹、痛い」と呻くように言う。


慌てて抱えるようにして、トイレに連れていく。

暫くして、青褪めた顔をして出て来た瑞樹ちゃんは、
バッグを手にもう一度トイレに入ってしまった。


そして出て来ると、
「生理、来たみたい…」と、
震えながら泣きそうな顔で言った。


嫌な予感しかなくて、
背中を冷たい汗が流れた気がした。


「心配だから、病院行こうね?」と言って、
開けてた窓を締めて、
その部屋を後にした。


そして、以前、紘子ちゃんが連れて行ってくれたという病院に向かった。
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