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木の実を集めて君にあげる
第8章 どうやったら護れる?
紘子ちゃんは高橋との交際が順調にいってて、
お互いのご両親にも紹介し合って、
卒業後に結婚する処まで話が進んでいると言っていた。

正直、羨ましかったけど、
心から祝福しようとも思った。


それもあって、
紘子ちゃんは今、住んでいるマンションから11月辺りには出て実家に戻って、
試験勉強やら結婚式の準備をすると言っていた。


休める拠点がなくなるのはなかなか辛いから、
何か考えないといけないなと思った。



でも、その後は少しずつ瑞樹ちゃんの体調も落ち着いていって、
ひとまず安心していた。


来月には瑞樹ちゃんの誕生日と、
赤ちゃんの6ヶ月になるというある日、
恐れていた連絡が江川さんから来た。


亮平さんがもう、厳しいから、
最期のお別れに瑞樹ちゃんを連れて来て欲しいという連絡だ。


大学に連れていく体で迎えに行って、
そのままいつか江川さんに連れていかれた大学病院に行った。

駐車場に入った時点で、
瑞樹ちゃんはもう、気付いていたと思う。


手を繋いで、病院に入って、
受付で名前を書いてビジターと書かれたカードを渡されて、
胸につけてあげて、自分もつける。


エレベーターに乗る時も手を繋いでいたけど、
瑞樹ちゃんの手は冷たくて、
身体は震えていた。


亮平の部屋に向かって歩き始めると、
瑞樹ちゃんが立ち止まってしまう。


もう、亮平さん、厳しくて、
可哀想だから、
生命維持装置を外してあげないとという話をした時だった。


瑞樹ちゃんが僕の手を振り切って、
「いやぁ…」と言いながら振り返って走り出してしまった。

咄嗟のことに、僕は少しだけ固まってしまった。

その僅かな時間のことを、
今でも後悔しても、しきれない。


慌てて追い掛けるけど、
嫌な悪夢のように僕の脚は重たくてなかなか追いつけない。

あっ!

と手を伸ばすけど僅かに届かないまま、
瑞樹ちゃんは階段からゆっくり転がり落ちてしまう。


僕は大声を上げたような気もするし、
声すら出ていなかったかもしれない。


慌てて駆け降りようとするけど、
脚がすくんで動けない。

近くに居た白衣を着た人たちが慌てて瑞樹ちゃんに駆け寄ると、
何か叫んでいる。
僕は座り込んで床を拳で叩きながら泣いていた。

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