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木の実を集めて君にあげる
第8章 どうやったら護れる?
まずは、母さん。
そして、瑞樹ちゃんのお母様に電話をした。

知人のお見舞いに病院に来て、
階段を踏み外してしまって落ちた時に頭を打ってしまって、
意識がなくて、
ICUに居ることだけ伝えた。

赤ちゃんのことはとても言えなかった。


電話をしている途中で、
江川さんが部屋に入ってきた。


「あれ?
瑞樹ちゃんは?」と訊かれて、
僕は肩を震わせながら、
階段から落ちて頭を打ったことを伝えて、
「僕が…間に合わなくて…、
瑞樹ちゃんをつかまえられなくて…」と言うと、
背中をポンポンとしてくれて、
「だったら、安西くん、
瑞樹ちゃんの代わりに亮平と会って貰えるかな?」と言った。


病室には、更に覇気もなく、
眠っているのか死んでいるのか判らない宇田川亮平が横たわっていた。

僕は思わず、
その身体に縋って、
「頼むから瑞樹ちゃんを連れて行かないでくれ。
僕が護るから。
お願い。
お願いします…」と泣きながら懇願したけど、
ピクリとも動かなかった。


江川さんに肩を支えられて部屋を出た。

「亮平には僕が付き添うから、
安西くんは瑞樹ちゃんに付き添ってあげて?
瑞樹ちゃんのご両親には、亮平のこと、
内緒なんだろう?」と言って、
「ほら、行きなよ」と肩を押された。


それで、僕はICUの患者用の待合室に入って、
祈り続けることしか出来なかった。


どれ位の時間が経ったのか判らなかったけど、
先に母さんが来てくれた。

黙って僕の手を握って、
「きっと大丈夫よ」と言ってくれた。

そして、程なく、瑞樹ちゃんのお母様が来た。

「あの…どういう状況なんですか?」と震えながら言ったお母様は、
改めて見ると瑞樹ちゃんに凄く似ているとぼんやり思った。


「知り合いのお見舞いに来たんですけど、
瑞樹ちゃんが階段を踏み外してしまって…。
すみません。
僕が気をつけて手をちゃんと繋いであげてたら…」と頭を下げた。


「それで、瑞樹さんは…?」

「頭を打ってしまって、意識がないからと、
ICUに入りましたが、
僕、家族じゃないから、
書類にも何も書けないって言われて…」と言うと、
「じゃあ、私が訊いてくるわね?
悠介くん、ありがとうね?」と言って、
待合室を出ようとするので、
僕たちも後に続いた。
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