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木の実を集めて君にあげる
第9章 夜明け
お正月ぐらい、実家に行ったらどうかなと、
瑞樹ちゃんに提案して、
本当に久々に逗子に向かった。
瑞樹ちゃんの実家には、
お母様は居たけど、
お父様はゴルフか何かで不在だった。
あまり会話も弾まず、
毎年行っていたというお祖母様の処も、
今年は先方がインフルエンザだということで訪問も見合わせていると言われて、
お節料理のお重を待たされてマンションに帰って来た。
瑞樹ちゃんは、淋しそうな顔もしてたけど、
マンションでのんびり温かい焙じ茶を飲んでいたら、
むしろ寛げて、ホッとした気がした。
その2日後の夜のことだった。
ふと目が覚めると、
瑞樹ちゃんが身体を丸めるようにしながら、
苦しそうにしていた。
震えながら歯を食いしばって、
お腹を押さえている。
慌てて瑞樹ちゃんの背中をさすって、
「どうしたの?
どこか、痛いの?」と言った。
「お腹…痛い…」と言いながら、
目尻に涙を溜めて痛みを堪えている。
動転した僕は、
海老に当たったのかななんて口走る。
お手洗いに行きたいという瑞樹ちゃんを支えながらトイレに連れていって、
中に座らせて、
外で待ってた。
中で倒れてないか、心配でならないけど、
なかなか、ドアは開かなかった。
そっとノックをしてから声を掛けて、
ドアをゆっくり開けてみると、
便座に座ったままの瑞樹ちゃんがゆっくり顔を見上げて、
「どうしよう?
救急車、呼ばなきゃ。
月(るな)ちゃんが流れちゃう。
出血してるの…」と涙を流しながら言った。
膝の処まで降ろされたショーツには、
確かに血液がついていた。
「えっと…、
シャワーで軽く流してから、
ナプキン当てれば良いのかな?」と言ってみる。
顔が紅く火照ってるのが自分でも判った。
でも、瑞樹ちゃんはこう言った。
「違うの。
これ、流産しそうになってるんでしょう?
病院に行かなきゃ」
えっ?
流産って…。
それに、月(るな)ちゃんって?
そっか。
やっぱり、瑞樹ちゃんの時計は、
あの時のまま、止まってたんだなということを思い知った。
どうしよう?
上手く説明出来るのかな?
説明して、
知ってしまったら…
瑞樹ちゃんの心、壊れたりしないかな。
辛すぎて忘れてるなら、
そのままの方が良いのかな。
色々なことが一瞬のうちに駆け巡るような気がした。
瑞樹ちゃんに提案して、
本当に久々に逗子に向かった。
瑞樹ちゃんの実家には、
お母様は居たけど、
お父様はゴルフか何かで不在だった。
あまり会話も弾まず、
毎年行っていたというお祖母様の処も、
今年は先方がインフルエンザだということで訪問も見合わせていると言われて、
お節料理のお重を待たされてマンションに帰って来た。
瑞樹ちゃんは、淋しそうな顔もしてたけど、
マンションでのんびり温かい焙じ茶を飲んでいたら、
むしろ寛げて、ホッとした気がした。
その2日後の夜のことだった。
ふと目が覚めると、
瑞樹ちゃんが身体を丸めるようにしながら、
苦しそうにしていた。
震えながら歯を食いしばって、
お腹を押さえている。
慌てて瑞樹ちゃんの背中をさすって、
「どうしたの?
どこか、痛いの?」と言った。
「お腹…痛い…」と言いながら、
目尻に涙を溜めて痛みを堪えている。
動転した僕は、
海老に当たったのかななんて口走る。
お手洗いに行きたいという瑞樹ちゃんを支えながらトイレに連れていって、
中に座らせて、
外で待ってた。
中で倒れてないか、心配でならないけど、
なかなか、ドアは開かなかった。
そっとノックをしてから声を掛けて、
ドアをゆっくり開けてみると、
便座に座ったままの瑞樹ちゃんがゆっくり顔を見上げて、
「どうしよう?
救急車、呼ばなきゃ。
月(るな)ちゃんが流れちゃう。
出血してるの…」と涙を流しながら言った。
膝の処まで降ろされたショーツには、
確かに血液がついていた。
「えっと…、
シャワーで軽く流してから、
ナプキン当てれば良いのかな?」と言ってみる。
顔が紅く火照ってるのが自分でも判った。
でも、瑞樹ちゃんはこう言った。
「違うの。
これ、流産しそうになってるんでしょう?
病院に行かなきゃ」
えっ?
流産って…。
それに、月(るな)ちゃんって?
そっか。
やっぱり、瑞樹ちゃんの時計は、
あの時のまま、止まってたんだなということを思い知った。
どうしよう?
上手く説明出来るのかな?
説明して、
知ってしまったら…
瑞樹ちゃんの心、壊れたりしないかな。
辛すぎて忘れてるなら、
そのままの方が良いのかな。
色々なことが一瞬のうちに駆け巡るような気がした。