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木の実を集めて君にあげる
第9章 夜明け
記憶をひとつひとつ、
拾い集めて行くように、
呟きながらこの2ヶ月ほどのことをたぐっていく。


宇田川亮平の病気。
病院に連れて行かれたこと。
そして、生命維持装置を外すこと。


「それで私…。
どうしたのかしら?
頭、痛い…」と苦しそうに顔を顰めると、
僕を見上げて、
「安西くん、私、どうしちゃったの?」と言う瑞樹ちゃんの瞳から、
ポロポロと涙がこぼれ落ちた。


僕は、本当は、
瑞樹ちゃんに辛いことは思い出して欲しくなかった。


でも…。


これからの長い人生を考えるならば、
きちんと受け止めることが必要なのかもしれないとも思った。


それを僕が一緒に受け止めて、
少しずつ一緒に乗り越えていく。


その為にと、
少しでも瑞樹ちゃんが落ち着いて考えて、
なんとか受け止めることが出来るように、
ゆっくり話をする。


宇田川亮平の病院に連れて行ったこと。
話を聞いて、
思わず駆け出してしまった瑞樹ちゃんを僕が止められなくて、
階段から落ちてしまったこと。
その時、頭を打ってしまって、
暫く意識が戻らなかったこと。

そして、
赤ちゃん…。

月(るな)ちゃんを助けられなかったことを伝えた。

心音が止まってしまって、
お腹から取り出さないと、
瑞樹ちゃんが危なかったことを説明した。


瑞樹ちゃんは、
自分を責めて、
更に泣いてしまう。


僕は、そうじゃないってことをどうしても言いたかった。

僕が…。
宇田川亮平に、
瑞樹ちゃんを連れて行かないでくれと頼んでしまったんだ。

だから、月(るな)ちゃんだけを連れて、
逝ってしまったんだ。


そんな風に思っていた。



でも、卑怯な僕はそんなことは言えなくて、
「違うよ。
亮平さんが、月(るな)ちゃんを連れて行きたかったんだよ」と言って、
瑞樹ちゃんを強く抱き締めながら泣いた。
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