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おっかない未亡人
第25章 サチコ18才
リビングに下りると夫は呑気にサッカーの試合を観ていた
ワールドカップだ

「初めまして。慎吾君とお付き合いさせていただいている幸子です。」

「あ、あぁ、初めまして。兄の京介です。慎吾にこんな可愛い彼女が居たなんてなぁ。」

可愛いだって
うふふ

「ドーナツ食べます?お茶入れますよ。」

初めて家にお呼ばれしたのに急須の場所知ってちゃまずいかな

「気が利くね。こんな子が奥さんだったらな。」

ばっちり二度目の奥さんでしたよ

「奥さまと喧嘩したんですか?」

「そうなんだよ。娘が産まれてから喧嘩ばかりでさ。」

慎吾がトイレから出てくる

「何話してたの?」

「昨晩のシンちゃんのティッシュの消費量について。」

「へ?」

「慎吾~良かったな彼女できて。二人は同じクラスなの?」

「あたしは短大生です。」

「え、年上!やるな~お前も。」


三人でドーナツを食べながらサッカーを見る
夫が熱心に応援しているから言わなかったけど
確かこの試合逆転負けしたんじゃなかったかな

「いやー日本がこのまま勝つかもな。」

「俺は負けると思うな。」

意地悪なシンちゃん

サッカーを見ててもあたしの視線は目の前の夫に注がれていた
隣でドーナツ食べてるシンちゃんが不憫でならないくらいに




帰り道、慎吾に駅まで送ってもらう

「幸子ちゃん、携帯見ていい?」

携帯を渡す

「真由ちゃんって?」

「短大の友達。」

疑心暗鬼になる気持ちも分かるけど
この時代のあたしを束縛することに意味ある?

未来に無事に戻ること考えようよ 
今は協力しないと

「合コンに誘われてるね。」

「行かないわよ。」

「この番号は?」

「たぶん彼。」

「めっちゃ掛かってきてるじゃん。」

確か向こうが浮気して別れたはず

「シンちゃん、戻ることに集中しないと、あたしたち、いつまでもこの時代に居たら、」

「楽しんでるでしょ?」

慎吾は機嫌が悪い

「兄ちゃんに会えて嬉しかったんでしょ。俺じゃ濡れないのにな。」

「それは時代のせいで、」

「しばらく一人で考えたい。」

「何言ってるの?」

「列車来たよ。」


あたしも悪い
無邪気に京ちゃんと話してた
でもそれは時代のせいで
向こうに帰ればチャラになるのに

これも亡くなった夫の陰謀なのか

あたしたち、試されてる


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