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おっかない未亡人
第1章 グレイなふたり
「いよいよ明日だね。」

「うん。」

松下の家で二人で食卓を囲む

「迎えに来ようか?」

「噂立つだろ。」

噂なんてもうどうでも良かった
しかもお互いもう一人なのだ
何の遠慮もいらないはずなのに

「立っちゃ嫌?」

「別に。」

相変わらず私たちは進展がなかった
松下の三人の息子も巣立ち
心置きなく泊まって帰ることはあっても
これから本格的に一緒にどうこうの話もしなかった


食事が住んで一服している時だった

「お前さ、もうここには来るな。」

「へ?」

すっとんきょうな声が出る

「どして?」

まじまじと松下の顔を見る

「俺はもう大丈夫だから。お前はお前の人生を生きろ。」

「へ?」

まだ事態が飲み込めない
幸子は泣き始めていた

「こんなに尽くしてきたのに。」

「感謝してるし、これからもここに居てほしい。だけど、お前をここに縛り続けるのは申し訳ない。」

「そんな、勝手すぎる。要するにあたしは用済みなのね。他の女を探すのね。」

「そんなこと言ってない。幸子、お前はまだ若いんだから、こんな俺に世話焼いてないで、」

「嫌!離れない。」

座っている松下の腕にしがみつく
幸子の好きなぶっとい腕、ごつごつの手

しかしその手を振りほどかれる

「帰れ!」

「ひどいよそんなの、、。」

「いいから帰れ!」

今まで聞いたことないような大きな声だった

幸子はへなへなと立ち上がってバッグを取る

「冷蔵庫に明日の分入ってるから、、。」

こんなときでも妻めいたセリフが出てしまう
自分でも情けなくて笑ってしまった


大粒の涙を流しながら帰る
3月の外はまだまだ寒かった

喧嘩して出てきたので上着を忘れてきたことに気がつく
取りに帰るのは気が引けた

「あー寒っ。」

独り言を言いながら
ああ今あたし振られたんだとじわじわと感じてくる
あんなに抱き合ったのに
あんなに笑い会えたのに
もう、仕事でフォローもしてやんない!

松下が好きだった
その気持ちに嘘はない
同僚が心配だからってだけでこんなに尽くさない
ポケットには合鍵が入っていた

新しい彼女にでも渡すか

幸子はイミフに走りだすのであった
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