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おっかない未亡人
第13章 自分のために戦う
「沢井次郎、、。」

待ち合わせ場所に着くまでに名刺を見返す

印象の薄い取引先とプライベートで会うのだ
この上なく気を使う
そしてこの食事を承諾して後悔していた

ま、ご飯だけ食べて
そそくさと帰ればいっか





「◯年生まれか。同い年ですわ。」

意外にも共通点があって安堵する

取材の時は作業服だったが
今日はポロシャツにジーンズというラフな格好だった

何とかこの場を持たさなければ

「素敵な時計ですね。」

とりあえず目についたものを誉めた

「普段は付けないんですけど、今日は遅刻してはいけないと思いましてね。」

「ちょっとくらい遅れても怒りませんよ~♪」

中華料理のお店だった
幸子はワンタン麺を食べる

「いい食べっぷりですね。」

「こう見えて良く食べるんです。」

「たくさん食べる女性は好感が持てるな。なんというか、生命力に溢れている。」

「ただ食い意地が張ってるだけですよ。」


その後も仕事の話や当たり障りのない世間話をして
すっかり御馳走になって店を出る


「ありがとうございました。御馳走さまでした。」


次はないだろうと思った
悪い人じゃないけど、いまいち惹かれない


「それじゃ。」

幸子は帰ろうとする  

「あの、、三原さんさえよければ、僕とお付き合いして頂けませんか。」

お付き合い?

ちゃんと告白されたのはいつぶりだろう

しかもあまりよく知らないのに
男社会だからよほど女性に縁が無かったのだろうか

「お付き合い、、ですか、、、。」

幸子は立ち尽くす

終わらせた不倫を忘れるために義理の弟に手を出して元夫とホテルに行ってしまうような私

「沢井さん、、私は、あなたが思っているような人間じゃないです。」

「と、、言いますと?」

「2回結婚しました。今は亡くなった2番目の夫の娘と二人で暮らしています。あなたみたいな真っ直ぐな人に、こんな複雑な私は受け止めきれない。」

事実をありのままに言って相手がどう出るか試した
沢井は一瞬切なそうな顔をしたが眼鏡の奥で老犬のように微笑んだ

「いや~実に面白い人ですね。興味深い。ますます知りたくなった。」

この人は何を言っているのだろう

「これ、僕の携帯番号です。ご飯でも飲みでも、また行きましょうよ。」

番号を書いた紙を渡される

どこまでも真っ直ぐな人なのだな


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