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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
「月城。狭霧を紹介しよう。
歳も近いし、良き仕事仲間となるだろう」
伯爵が狭霧を月城の前に来るように促した。

「…月城だ。
昨年、私は文部省の委託を受け、帝大の給費生を探して全国を巡回していた。
彼は見事にその試験に満点で受かり、能登から上京したのだ。
昼間は大学に通い、主に夕方から我が屋敷に勤めている。
…彼の身分は執事見習いだが、今は下僕の仕事から始めているのだ」

伯爵の紹介に、月城と呼ばれた青年は折り目正しく一礼をした。
「月城森と申します。
若輩者ですが、どうぞ宜しくお願いいたします」

「…泉狭霧です。
私も従者に成り立てなのです。
色々と教えてください。
まずは友だちになって欲しいな」
ざっくばらんに挨拶すると、青年はやや驚いたように眼鏡の奥の涼やかな瞳を見開いた。

…見れば見るほど美形な青年だな。
すらりとした長身、手足が長くお仕着せのテイルコートがよく似合う。
端正な眉、切れ長の瞳、形の良い鼻筋と口唇…。
全体的に理知的で思慮深そうな雰囲気が漂っている。
…どこか微かに、哀愁の影があるのが気に掛かったが…。

狭霧は感心した。
…やっぱり旦那様は男女問わず面食いなんだな…。
少し可笑しくなる。

「あのね、狭霧。
月城はね、梨央の騎士なのよ」
伯爵の腕の中で梨央は秘密を話すようにこっそりと打ち明けた。
「…騎士…ですか…?」
愛らしい瞳がきらきらと輝く。
「そう!お父様がおっしゃったの。
月城は梨央を護る騎士だから、お父様のお留守でも安心してすごせるよ…て。
ね!月城!」

月城は梨央の言葉に、その白皙の美貌にやや含羞の色を滲ませた。
「…はい。梨央様。
月城は梨央様をどのような時も全身全霊でお護りいたします」
…ストイックな雰囲気の青年から、意外なほどに情熱的な言葉が告げられた。

…もしかして…彼は…。

狭霧は思わず伯爵に囁いた。
「…縣様のライバルですね…」
縣礼也は梨央の後見人かつ未来の婚約者な筈だ。
船上で、礼也の梨央に対する並々ならぬ恋慕の気持ちを、狭霧は直に聴いている。

伯爵は愉し気に笑った。
「美しい騎士たちが梨央を心から護ってくれるのだ。
こんなに頼もしく、麗しい光景はないよ」

「…はあ…なるほど…」
…大人なんだか、悪趣味なんだかよく分からないお人だよ…。
狭霧は心の中で呟いた。

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