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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
「月城!お父様に温室の薔薇をお見せしたいわ。
昨日咲いたばかりのブルーローズよ。
梨央が月城と一緒にお世話したのよね。
月城、一緒に来て!」
梨央は伯爵の腕からするりと降りると、月城に自ら手を差し出した。
「はい。お供いたします」
月城は恭しく、また、愛おしげに梨央と手を繋ぐ。
「お父様!
月城と先に行っているわね!
すぐにいらしてね」
梨央はぱたぱたと可愛らしい足音を立てて玄関ホールに走り出した。
月城は梨央の手を取りながら、後に続く。
「…人見知りで恥ずかしがり屋の梨央が、あんなに他人に懐くのは珍しいのだよ」
伯爵は嬉しそうな…それでいてやや気遣わし気な表情で二人の後ろ姿を見つめていた。
「…月城は成績優秀、眉目秀麗、仕事も良くできる。
性格は穏やかで謙虚で協調性もある。
執事に必要な威厳や品格もおいおい身につくだろう。
将来が実に楽しみな青年だ」
「そのようですね…」
狭霧も素直にそう思う。
…けれど…
と、北白川伯爵ははっとするような冷静な声で続けた。
「…梨央の将来の婿は、礼也くん以外には考えられない」
狭霧は眼を見張り、思わず尋ねた。
「…旦那様、それは…」
…使用人との結婚は認めないということですか…?
口にしようとした瞬間…
伯爵はふっと表情を和らげ、にっこりと微笑んだ。
「…まだまだ先の話だ。
梨央はまだ七歳だ。
今の梨央のプリンス・チャーミングは私だからな」
そう朗らかに答えると、颯爽と玄関ホールに入って行ったのだった。
昨日咲いたばかりのブルーローズよ。
梨央が月城と一緒にお世話したのよね。
月城、一緒に来て!」
梨央は伯爵の腕からするりと降りると、月城に自ら手を差し出した。
「はい。お供いたします」
月城は恭しく、また、愛おしげに梨央と手を繋ぐ。
「お父様!
月城と先に行っているわね!
すぐにいらしてね」
梨央はぱたぱたと可愛らしい足音を立てて玄関ホールに走り出した。
月城は梨央の手を取りながら、後に続く。
「…人見知りで恥ずかしがり屋の梨央が、あんなに他人に懐くのは珍しいのだよ」
伯爵は嬉しそうな…それでいてやや気遣わし気な表情で二人の後ろ姿を見つめていた。
「…月城は成績優秀、眉目秀麗、仕事も良くできる。
性格は穏やかで謙虚で協調性もある。
執事に必要な威厳や品格もおいおい身につくだろう。
将来が実に楽しみな青年だ」
「そのようですね…」
狭霧も素直にそう思う。
…けれど…
と、北白川伯爵ははっとするような冷静な声で続けた。
「…梨央の将来の婿は、礼也くん以外には考えられない」
狭霧は眼を見張り、思わず尋ねた。
「…旦那様、それは…」
…使用人との結婚は認めないということですか…?
口にしようとした瞬間…
伯爵はふっと表情を和らげ、にっこりと微笑んだ。
「…まだまだ先の話だ。
梨央はまだ七歳だ。
今の梨央のプリンス・チャーミングは私だからな」
そう朗らかに答えると、颯爽と玄関ホールに入って行ったのだった。