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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
…けれど、それからも狭霧の月城への構い癖が収まった訳ではなかった。
貌を合わすたびに絡みにゆき、ふざけたり甘えたりして月城をわざと困惑させるのだ。
なぜなら、狭霧は月城が可愛くて仕方なかったのだ。
見目麗しく、真面目で知的で物静か…。
そんな優等生が自分の一言や振る舞いに動揺したり照れたりする様子が本当に可愛らしく、癒されるのだ。
元々千雪に似た綺麗で素直で純粋な男子が狭霧は大好きだからだ。
…千雪に会えない代わりに、月城を構いたかったのかもしれない。
「月城くんさあ。今、好きなひといる?」
階下の作業室…月城は梨央の乗馬用のブーツの手入れをしている。
…月城の手が止まる。
「…いません…」
「嘘だね」
狭霧は月城が丁寧にメンテナンスしている小さくて愛らしい臙脂色のブーツにそっと触れた。
梨央は滅多に外出はしないが、伯爵が帰宅している時は、彼と共に乗馬や遠乗りに出かける。
伯爵の前に大切に抱かれて馬に乗る梨央は大層可愛らしく、その姿は馬場でも有名だった。
乗馬には狭霧もお供する。
…乗馬は小さな頃から嫌々習わされていたから、一通りの心得はあった。
今となっては、大層役に立っている特技だ。
「…梨央様…ってまだお小さいのに本当に美人だよね…。
旦那様似なのかな」
…これは事実だ。
狭霧はこんなにも完璧な美貌を誇る少女を見たことがない。
「…ええ。そうですね…」
月城は、やや柔らかくなった涼やかな眼元で微かに微笑んだ。
「お美しくてお可愛らしくてお優しくて無邪気で…それにとても利発でいらっしゃいます。
お教えしたことは一度で理解されますし、ピアノも本当にお上手で…」
普段、寡黙な月城と思えないほど、饒舌に情熱的に語る。
そんな風に熱を込めて月城に語らせる梨央に、狭霧は微かに嫉妬心を覚えるほどだ。
…だからつい、こんなことを聴いてしまうのだ。
「…月城くんさ、梨央様のこと、好きでしょう?」
貌を合わすたびに絡みにゆき、ふざけたり甘えたりして月城をわざと困惑させるのだ。
なぜなら、狭霧は月城が可愛くて仕方なかったのだ。
見目麗しく、真面目で知的で物静か…。
そんな優等生が自分の一言や振る舞いに動揺したり照れたりする様子が本当に可愛らしく、癒されるのだ。
元々千雪に似た綺麗で素直で純粋な男子が狭霧は大好きだからだ。
…千雪に会えない代わりに、月城を構いたかったのかもしれない。
「月城くんさあ。今、好きなひといる?」
階下の作業室…月城は梨央の乗馬用のブーツの手入れをしている。
…月城の手が止まる。
「…いません…」
「嘘だね」
狭霧は月城が丁寧にメンテナンスしている小さくて愛らしい臙脂色のブーツにそっと触れた。
梨央は滅多に外出はしないが、伯爵が帰宅している時は、彼と共に乗馬や遠乗りに出かける。
伯爵の前に大切に抱かれて馬に乗る梨央は大層可愛らしく、その姿は馬場でも有名だった。
乗馬には狭霧もお供する。
…乗馬は小さな頃から嫌々習わされていたから、一通りの心得はあった。
今となっては、大層役に立っている特技だ。
「…梨央様…ってまだお小さいのに本当に美人だよね…。
旦那様似なのかな」
…これは事実だ。
狭霧はこんなにも完璧な美貌を誇る少女を見たことがない。
「…ええ。そうですね…」
月城は、やや柔らかくなった涼やかな眼元で微かに微笑んだ。
「お美しくてお可愛らしくてお優しくて無邪気で…それにとても利発でいらっしゃいます。
お教えしたことは一度で理解されますし、ピアノも本当にお上手で…」
普段、寡黙な月城と思えないほど、饒舌に情熱的に語る。
そんな風に熱を込めて月城に語らせる梨央に、狭霧は微かに嫉妬心を覚えるほどだ。
…だからつい、こんなことを聴いてしまうのだ。
「…月城くんさ、梨央様のこと、好きでしょう?」