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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
屋敷に到着するや否や、伯爵は狭霧を私室に連れて行った。
憔悴しきった貌の狭霧を、他の使用人に晒すわけにはいかなかったのだろう。

迎えに出た執事の橘に
「春さんに温かなショコラを作ってもらってくれ。
…狭霧が少し体調を崩してね。
私の部屋で休ませながら、打ち合わせをする。
お前以外は誰も近づけないでくれ」
と、伯爵が命じた。

…キャンセルしたお茶会…そして、この一見奇妙とも思える命令に、橘は顔色ひとつ変えずに頷いた。

「畏まりました。旦那様」

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