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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
「…私を従者の職から解雇して下さい。
お願いいたします。旦那様」
深々と頭を下げ続ける。
「…なぜだね?狭霧」
静かな声に、こわごわと貌を上げる。
射干玉の闇色をした美しい瞳が、瞬きもせずに狭霧を見つめていた。
「…これ以上、旦那様にご迷惑をお掛けしたくないんです。
私が旦那様の従者として、これからさまざまなお屋敷や訪問先に伺う度に、今日のようなことがまた起きるでしょう。
噂はもう社交界中に広まっています。
このままだと、旦那様のお名前に傷がつきます。
…北白川伯爵の従者は山科子爵の息子を誑かし、死に追いやり、男娼まがいなことをしていた…と」
「やめなさい」
伯爵の手が狭霧の口唇を封じた。
「君はそんなことはしてはいない。
君に落ち度は何もない。
そんな君を、私は解雇する気はない」
その手を狭霧は乱暴に振り解き、叫ぶ。
「私が…私が嫌なんです…!
貴方をこれ以上スキャンダルに巻き込みたくない…!
…貴方が…!」
…貴方が…
その言葉は、透明な涙とともに、震える口唇から溢れ落ちた…。
「…貴方が…好きだから…」
お願いいたします。旦那様」
深々と頭を下げ続ける。
「…なぜだね?狭霧」
静かな声に、こわごわと貌を上げる。
射干玉の闇色をした美しい瞳が、瞬きもせずに狭霧を見つめていた。
「…これ以上、旦那様にご迷惑をお掛けしたくないんです。
私が旦那様の従者として、これからさまざまなお屋敷や訪問先に伺う度に、今日のようなことがまた起きるでしょう。
噂はもう社交界中に広まっています。
このままだと、旦那様のお名前に傷がつきます。
…北白川伯爵の従者は山科子爵の息子を誑かし、死に追いやり、男娼まがいなことをしていた…と」
「やめなさい」
伯爵の手が狭霧の口唇を封じた。
「君はそんなことはしてはいない。
君に落ち度は何もない。
そんな君を、私は解雇する気はない」
その手を狭霧は乱暴に振り解き、叫ぶ。
「私が…私が嫌なんです…!
貴方をこれ以上スキャンダルに巻き込みたくない…!
…貴方が…!」
…貴方が…
その言葉は、透明な涙とともに、震える口唇から溢れ落ちた…。
「…貴方が…好きだから…」