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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
広い寝台は、余り用を為さなかった。
愛し合う行為は次第に激しさを増し、二人は再び、床に転がり落ちた。

花冷えする夜の石造りの洋館は、四月を過ぎても暖炉に火が入っている。
狭霧は伯爵に暖炉の前まで引き摺られ、ほっそりとした腰を抱え上げられ、獣の体位で犯された。

「…ああ…っ…!…ふか…い…っ…!」

暖炉の炎に照らされた狭霧の髪は、亜麻色に輝き…その髪を激しく乱しながら、男に応える。
「…あぁ…い…いい…っ…きもち…い…」
…男の牡は、灼熱の楔のようだ。
狭霧の柔らかな媚肉の最奥を抉るように犯し続ける。
先刻まで、優しい愛撫を繰り返していた男と思えぬほど、それは荒々しく、野卑とも言える動きだった。
常日頃、優雅な物腰の高貴な男の所作とは真逆の好色な振る舞いに、狭霧はぞくぞくするほどの快楽を覚える。

…狭霧は他人に言われるほど、男性経験があるわけではない。
深く付き合ったのは和彦だけだ。
…その和彦は、狭霧を真綿に包むように大切に扱った。
だからどちらかと言うとオーソドックスな性の交わりであった。
そのことに不満などなかった。
和彦の優しい愛撫に満足していた。

…けれど、こうして成熟し、性技に長けた男に身体の隅々まで征服されるかのように犯し尽くされると、狭霧のまだ未熟だった性の部分が、目覚めさせられ、開花されるのを感じざるを得なかった。

…伯爵は、大胆に激しく狭霧を抱きながら、その耳朶に甘く…微かに底意地悪く囁いた。
「…君は…なんていやらしい身体をしているのだ…。
こんなにも淫らで感じやすい身体をして…今までよく独り寝ができたものだね…。
…本当に貞淑な未亡人だ…。
彼に操を立てていたのか?
…こんな…近寄り難いほどに美しい貌をして…こんなにも妖しく乱れる癖に…」


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