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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第2章 狭霧の告白
「…あの…これ…きみのだよね?」

キャンバスを棚に片し、帰ろうとする狭霧の背中に、その遠慮勝ちな声はかかった。

振り返るその先に居たのは、すらりとした長身の青年…同じ塾生の山科和彦だ。
…確か同い年。
入塾した時に先生からそう紹介された。
けれど、帝国大学法学部に通いながらの塾生だから、落ちこぼれの狭霧とは雲泥の差だ。
しかも和彦は山科子爵の長男だ。
山科家は大貴族というわけではないが、由緒正しい名門で代々の当主が貴族院議長を歴任していることでも有名だった。
一族は判事や弁護士、学者などインテリジェンスな人物を多く輩出しているということでも…。

…つまり、皆んな頭がいいんだな。

その山科和彦が、緊張した面持ちで差し出すのは、ビリジアンカラーの油絵具だ。
適当なキャップの閉め方…。
あ、自分のだとすぐに分かった。

「ありがとう。
また失くすとこだった」
愛想笑いをして受け取る。
その刹那、絵の具が落ちそうになったので、狭霧は和彦の手を軽く握ってしまった。

「…あっ…!」
火傷したような声を上げられ、狭霧は軽く驚く。
「ごめん。痛かった?」
青年相手にそれはないと思いながら。

「ち、違うんだ。ぼ、僕の方こそごめん。
さ、触っちゃって…その…君の手に…」

地味だがよく見ると整った貌を紅潮させながら、和彦は侘びた。
なぜだか首筋まで赤く染めている。

…変なやつ。
一瞬、可笑しく思いながら、持ち前の愛嬌のある笑顔を目一杯向けてやる。

「大丈夫だよ。
男が男の手を握ったって問題はないだろう?」

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