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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
…月城は、まだ早朝だというのに、髪をきちんと撫で付け、下僕の制服を一部の隙もなく身に付けていた。
彼は恭しく梨央を抱き上げ、寝室の前に立つ狭霧に視線を移す。
「…狭霧さん…?」
眼鏡の奥、不思議そうな眼差しで狭霧の姿を見つめる。
…やべ…。
こちらは慌てて着込んだシャツとスラックスだけの姿だ。
素足に革靴だし、長めの髪は手櫛で直しただけだから、かなり乱れているに違いない。
「…こんな早朝に…旦那様のお部屋でご用事でしたか?」
「…う、うん…」
歯切れ悪く頷く。
「月城、狭霧はお父様のお仕事を一晩中お手伝いしていたみたいなの。
…梨央もお部屋に入りたいって言ったのだけれど、ダメだって…」
また泣き出しそうになった梨央の背中を優しくて撫でながら、やや厳しい口調で狭霧に尋ねた。
「狭霧さん。なぜだめなのですか?」
「…それは…その…」
「梨央様がお可哀想です。
旦那様がご帰国されている時くらい、お好きな時に会わせて差し上げる訳にはいきませんか?」
理路整然と述べる月城に、流石に狭霧は苛立った。
…そこは…察しろよ!
俺の格好を見ろよ!
早朝に!この如何にもだらしない今起きたばかりみたいな姿で!旦那様の寝室前に立っているんだぜ!
何があったか、一目瞭然だろ!
…強い眼力で訴えても、月城は不審な眼差しで狭霧を見つめ返すばかりだ。
狭霧は諦めのため息を吐く。
…仕方ねえな。
狭霧は月城にずかずかと近づく。
そうしてキスするような近さで、その耳朶に憮然とした口調で囁いた。
「…俺は昨夜、旦那様と寝た。
その寝乱れた寝室に梨央様を通す訳にはいかない。
だから君が梨央様を説得してくれ」
「…あ…」
…見る見る間に、月城の形の良い耳朶が紅く染まっていった。
彼は恭しく梨央を抱き上げ、寝室の前に立つ狭霧に視線を移す。
「…狭霧さん…?」
眼鏡の奥、不思議そうな眼差しで狭霧の姿を見つめる。
…やべ…。
こちらは慌てて着込んだシャツとスラックスだけの姿だ。
素足に革靴だし、長めの髪は手櫛で直しただけだから、かなり乱れているに違いない。
「…こんな早朝に…旦那様のお部屋でご用事でしたか?」
「…う、うん…」
歯切れ悪く頷く。
「月城、狭霧はお父様のお仕事を一晩中お手伝いしていたみたいなの。
…梨央もお部屋に入りたいって言ったのだけれど、ダメだって…」
また泣き出しそうになった梨央の背中を優しくて撫でながら、やや厳しい口調で狭霧に尋ねた。
「狭霧さん。なぜだめなのですか?」
「…それは…その…」
「梨央様がお可哀想です。
旦那様がご帰国されている時くらい、お好きな時に会わせて差し上げる訳にはいきませんか?」
理路整然と述べる月城に、流石に狭霧は苛立った。
…そこは…察しろよ!
俺の格好を見ろよ!
早朝に!この如何にもだらしない今起きたばかりみたいな姿で!旦那様の寝室前に立っているんだぜ!
何があったか、一目瞭然だろ!
…強い眼力で訴えても、月城は不審な眼差しで狭霧を見つめ返すばかりだ。
狭霧は諦めのため息を吐く。
…仕方ねえな。
狭霧は月城にずかずかと近づく。
そうしてキスするような近さで、その耳朶に憮然とした口調で囁いた。
「…俺は昨夜、旦那様と寝た。
その寝乱れた寝室に梨央様を通す訳にはいかない。
だから君が梨央様を説得してくれ」
「…あ…」
…見る見る間に、月城の形の良い耳朶が紅く染まっていった。