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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
狭霧はさり気なく花の前に立ち、洗い物を隠す。
「…旦那様のシーツに誤ってナイトキャップのワインを溢してしまってね。
染みにならないように洗っているんだよ」
「あら、そんなことあたしがします!
従者の狭霧さんにさせたら、あたしが橘さんに叱られるわ」
「いや、大丈夫。
…あ、じゃあ下洗いするからあとは頼めるかな?
…それから、旦那様のリネン類を出しておいて貰えると助かるんだけど…」
「あたしがやります。
このあと、旦那様の寝室のお掃除に行きますから一緒にベッドメイクしてきます。
お任せください」
花は働き者で真面目なメイドと評判だった。
…ここは素直に任せた方が、逆に怪しまれないかもしれない…。
狭霧は頭の中で素早く考えを巡らせた。

「ありがとう。本当に助かるよ。
悪いけど、頼むね。
…あとで、美味しいキャンディ・ボンボンをご馳走するよ。
パリ一のパティシエの店のやつだ。
…よろしくね」
狭霧は大サービスのウィンクする。

「は、は、はい!」
…花は首まで赤く染め、狭霧をうっとりと見つめたのだった。

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