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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
慌ただしく朝食を終え、狭霧は北白川伯爵の着替えの準備をする為に席を立つ。
すると、丁度大学に行こうとする月城と廊下で出会った。

…仕立ての良いシャツに洒落た若草色のジャケット…。
一見すると、とても使用人には見えない高価で優雅な服を月城は身に纏っていた。
まるで富裕層の大学生のようだ。
スタイルが良く美貌の月城には大層良く似合う。
恐らくは着道楽な伯爵からのお下がりだろう。
伯爵は見目麗しい月城に洒落た服を着させて、美しい彼を鑑賞するのが好きらしい。
…狭霧同様に。

「…あ…」
月城は狭霧を見つめ、再び白皙の貌を赤らめた。
…何を思っているのか、一目瞭然だ。

「…あのさ、月城くん。ちょっと時間もらえる?」
「…ご、五分くらいなら…」
「充分だ」
にっこり笑い、やや緊張している月城の肩を抱きながら裏庭へといざなった。

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